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「氷の城壁」第7話「鍵師」のネタバレ感想考察

「氷の城壁」第7話「鍵師」のネタバレ感想考察

今回は、「氷の城壁」第7話「鍵師」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。

前話については、こちらの「氷の城壁」第6話「雨宮湊」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

目次

「氷の城壁」第7話「鍵師」のあらすじネタバレ

雨宮湊の友人たちの間では、氷川小雪について「プライドが高くて周囲を見下しているから浮いているのではないか」という心ない噂が流れていました。

しかし、湊はその噂を鵜呑みにせず、自分自身の「成功体験」を振り返ります。

これまで湊が関わってきた「孤立している人」たちは、話してみれば意外と良い奴だったり、単に自分から話しかけるのが苦手だったりするだけでした。

湊が声をかけることで彼らは皆、心の扉を開き、「ありがとう」と感謝してくれたのです。

そんな自負がある湊は、小雪に対しても「自分なら彼女の心の鍵を開けられるはずだ」という全能感に近い自信を抱き、一人でいる彼女を見て「かわ……(いそう)」と同情の眼差しを向けます。

そんな湊の背後では、友人から「他校にばかり女を作って」と私生活の奔放さを揶揄されますが、彼は適当に受け流し、小雪への興味を募らせていくのでした。

一方、小雪の心は中学時代の壮絶なトラウマに支配されていました。

当時の彼女は、五十嵐翼ら男子生徒からの執拗な絡みに怯え、必死に逃げ回る日々を送っていました。

しかし、その姿は周囲の女子たちの目に「男子の気を引こうとしている」「被害者ぶって調子に乗っている」と歪んで映り、激しい嫉妬とバッシングを浴びることになります。

男子からは土足で踏み込まれ、女子からは一方的に敵視される。

誰にも味方がいなかった地獄のような日々を思い出し、小雪は現在の「誰とも関わらない平穏」を改めて噛みしめます。

自分を変えてほしいなどと微塵も願っていない小雪と、勝手な使命感でその「鍵」を開けようとする湊。二人の温度差が決定的に浮き彫りになるエピソードです。

以上、第7話「鍵師」のあらすじネタバレでした。

次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

まとめ記事

>>「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察

「氷の城壁」第7話「鍵師」のネタバレ感想考察

『氷の城壁』第7話「鍵師」を読んで、雨宮湊と氷川小雪という、正反対の場所に立つ二人の「溝」がさらに深まったことに、強い不安と興味を抱きました。

まず、湊の抱く「鍵師」としての自負に、ある種の恐ろしさを感じました。

彼はこれまで多くの人を「救ってきた」という成功体験から、小雪に対しても「自分なら鍵を開けられる」と信じて疑いません。

しかし、彼が小雪を見て「かわいそう(かわ……)」と抱いた感情は、対等な人間へのリスペクトではなく、どこか上から目線の憐れみに見えてしまいます。

相手が「鍵をかけて守りたいものがある」という可能性に思い至らず、勝手に助けるべき対象だと決めつける姿勢は、善意であるからこそ拒絶が難しく、小雪にとっては凶器にもなり得る「傲慢な優しさ」だと言えるでしょう。

一方で、明かされた小雪の中学時代の回想は、想像以上に凄惨で胸が締め付けられました。

男子からは執拗に追い回され、それを「嫌だ」と逃げることさえ、女子からは「被害者ぶって調子に乗っている」とバッシングの対象にされてしまう。

この「全方位から攻撃される絶望感」は、彼女がなぜ今、あそこまで無愛想に、そして徹底して独りでいることを選ぶのかという理由を、あまりにも重く裏付けています。

彼女にとって「独り」は寂しいものではなく、誰からも傷つけられない唯一の「安全地帯」なのです。

そんな彼女の聖域を、湊は「良いこと」をしているつもりでこじ開けようとしています。

ハヤトからの揶揄にヘラヘラと笑う湊の軽薄さと、過去の傷を抱えて震える小雪の深刻さ。

この二人のコントラストが際立つほど、湊が小雪の「城壁」を壊そうとする行為が、取り返しのつかない二次加害になってしまわないか、祈るような気持ちで読み進めずにはいられませんでした。

湊の「鍵師」としての傲慢な全能感

第7話のタイトルにもなっている「鍵師」という言葉は、雨宮湊という人間の本質と、彼が無自覚に抱える「特権階級的なエゴ」を見事に言い表していると感じました。

湊が過去に孤立していた人々を救い、感謝されてきたというエピソードは、一見すると彼の美談です。

しかし、小雪に対しても「自分なら開けられる」と意気込む姿からは、相手への深い理解よりも先に、「人を救える自分」を確認したいという自己満足的な全能感が透けて見えます。

彼にとって小雪の城壁は、彼女の心を守るための切実な防衛手段ではなく、自分のコミュ力を試すための「新しいパズル」のように扱われているのではないでしょうか。

特に、小雪を遠くから見て抱いた「かわ……(いそう)」という同情の念には、強い違和感を覚えます。

相手がなぜ一人でいるのか、その沈黙にどんな痛みが隠されているのかを想像する前に、勝手に「救われるべき不幸な存在」だと定義してしまう。

この無意識の格付けこそが、湊の持つ「傲慢さ」の正体です。彼が過去に救ってきた人々は、たまたま彼のような光を必要としていただけであり、小雪のように「踏み込まれること自体が恐怖」である人間にとって、彼の鍵開けは「救済」ではなく「不法侵入」に等しい暴力になり得ます。

また、他校に彼女を何人も作るような彼の軽薄な人間関係の背景と、この「誰にでもいい顔をして懐に入る」スタイルが地続きであることも、彼の全能感の危うさを助長しています。

「良かれと思って」という善意ほど、拒絶が難しく、受け手を追い詰めるものはありません。

小雪が中学時代に味わった「勝手に男子に絡まれ、勝手に女子に妬まれる」という、本人の意思が介在しない理不尽な地獄です。

湊の「鍵師」としての振る舞いが、図らずもその地獄の再現になってしまわないか、彼の爽やかな笑顔の裏にある独善性が恐ろしく感じられた回でした。

小雪を追い詰めた「二重の孤立」

第7話で描かれた小雪の中学時代の回想は、彼女が背負わされた理不尽さがあまりにも過酷で、読んでいて胸が締め付けられる思いでした。

彼女が直面していたのは、男子からの無理解な「侵攻」と、女子からの容赦ない「排斥」という、逃げ場のない二重の孤立だったからです。

まず、五十嵐をはじめとする男子生徒たちの振る舞いです。

彼らは「好きだから」「可愛いから」という身勝手な理由で、嫌がる小雪に執拗に付きまといました。彼らにとっての好意は、小雪にとっては平穏を奪う恐怖でしかありません。

しかし、この「望まない注目」を浴びてしまったことが、さらなる悲劇を呼び寄せます。

次に小雪を襲ったのは、同性である女子たちからの冷酷な攻撃でした。男子から追いかけ回される小雪の姿を、彼女たちは「愛されている特権」と誤認し、嫉妬の矛先を向けました。

「被害者ぶって調子に乗っている」という言葉は、実際に逃げ場を失い傷ついている小雪にとって、最も残酷なナイフです。

男子に踏み込まれて疲弊している時に、本来なら共感を期待したい女子からも「加害者」扱いをされる。この瞬間に、彼女の世界から「味方」は一人もいなくなったのだと感じます。

この二重の攻撃によって、小雪は「目立つこと」や「人と関わること」をリスクとしてしか捉えられなくなりました。彼女が無愛想でいるのは、誰かを見下しているからではなく、男子に隙を与えず、女子の反感を買わないために編み出した、血の滲むような**「生存戦略」**です。

湊が「自分なら心の鍵を開けられる」と軽やかに近づこうとする一方で、小雪がこれほどの深い地獄を背負っているという対比。

彼女が今守っている「平穏な孤立」が、どれほど必死に手に入れた安息の地であるかを思うと、安易にその壁を壊そうとする湊の行動がいかに危ういものであるかが際立つエピソードでした。

噛み合わない「鍵」と「城壁」の行方

第7話のタイトルが「鍵師」であったことは、湊と小雪の関係が「救い」ではなく、いかに一方的な「侵入」から始まろうとしているかを象徴していました。

湊は、小雪の心を閉じられた「鍵」だと捉え、それを開けることが彼女の幸せに繋がると信じて疑いません。

しかし、小雪にとって今の状態は「閉じ込められている」のではなく、自らの意思で強固に築いた「城壁」の中に自分を保護している状態です。

湊が善意で差し込もうとしている鍵は、小雪からすれば、ようやく手に入れた平穏な聖域を破壊しようとする、恐ろしいピッキングツールのように見えているはずです。

この二人の決定的な噛み合わなさは、それぞれの「過去の成功と失敗」に根ざしているのが非常に皮肉です。

 湊は、他人と関わることで自分も相手も幸せになれるという「成功体験」を積み上げてきました。対して小雪は、他人と関われば関わるほど、全方位から攻撃され傷つくという「失敗体験」を無理やり植え付けられてきました。

湊が「鍵」を開けようとすればするほど、小雪は防衛本能で「城壁」をより高く、より分厚く補強していくでしょう。

今の湊にとって、小雪への興味はどこか「難攻不落の城を落とすゲーム」のような高揚感を孕んでいるように見えます。

しかし、彼がその壁を無理やりこじ開けた先に待っているのは、感謝の言葉ではなく、過去の傷を抉られた小雪の悲鳴かもしれません。

善意の「鍵師」がその傲慢さに気づくのか、あるいは「城壁」に跳ね返されて自尊心を砕かれるのか。

互いの痛みの重さが違う二人の「噛み合わない歯車」が、どのように動き出すのか。嵐の前の静けさを感じさせる、緊張感に満ちた回でした。

以上、第7話「鍵師」の感想考察でした。

次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

まとめ記事

>>「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察

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