今回は、「氷の城壁」第8話「幼馴染」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第7話「鍵師」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第8話「幼馴染」のあらすじネタバレ

物語は、小雪の小学生時代の回想から始まります。
当時から小柄で愛らしい容姿をしていた小雪は、その見た目ゆえに男子たちの格好の標的にされていました。
勇気を出して「ほっといて」と拒絶しても、「チビがキレた!」と笑い飛ばされるだけで、彼女の言葉は誰にも届きません。
無力感に苛まれる小雪は、いつしか「誰もが恐れをなすような姿」や「すべてを跳ね除ける強い力」を渇望するようになっていました。
そんな絶望の中にいた小雪を救ったのが、幼馴染の安曇美姫でした。
当時の美姫は男子よりも体格が良く、持ち前の力強さで小雪を執拗な絡みから守り抜く、彼女にとっての「ヒーロー」だったのです。

場面は現在に移り、小雪の部屋でテスト勉強に励む二人の姿が描かれます。
かつては美姫に守られていた小雪ですが、今は勉強が苦手な美姫を熱心に教えることで、彼女を支えていました。
美姫は以前から抱えていた「本当の自分がわからない」という悩みに再び直面し、一時的に落ち込みますが、すぐにいつもの騒がしい調子に戻って小雪を呆れさせます。

二人は来週、同じ団地内にある公民館の自習室で一緒に勉強する約束をして別れます。
一方、同じ頃、ヨータもまた公民館の自習室を利用して帰宅したところでした。
「明日も遅くなる」と家族に告げるヨータ。小雪と美姫が向かう先にヨータがいるという、新たな交差を予感させる展開で幕を閉じます。
以上、第8話「幼馴染」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第8話「幼馴染」のネタバレ感想考察
第8話は、小雪と美姫という正反対な二人の間に流れる、「持ちつ持たれつの深い絆」が丁寧に描かれた心温まる回でした。
まず、小雪がなぜ「強くありたい」と願うようになったのか、その原点が小学生時代の回想で明かされたのが印象的です。
小柄で可愛らしいことが、彼女にとっては「舐められる原因」でしかなく、言葉が通じない男子たちへの恐怖が彼女に「恐ろしい見た目」を渇望させた。
その切実な叫びを知ると、今の彼女が築いている「無愛想な城壁」は、彼女が長年かけてようやく手に入れた「身を守るための鎧」なのだと改めて強く感じました。
そんな彼女を力で守ってきた「ヒーロー」美姫との関係性も、非常に尊いものです。
かつては美姫が物理的に小雪を守り、今は小雪が知識(勉強)で美姫を支えている。
成長して形は変わっても、二人の根底にある「相手を助けたい」という純粋な想いが変わっていないことに、読者として救われる思いがしました。
また、美姫がふと見せる「本当の自分が分からない」という揺らぎも、今後の重要なポイントになりそうです。
常に周囲を明るく照らす彼女が、小雪の前でだけは「ズーン」と落ち込んだ姿を見せられる。
小雪にとっても美姫にとっても、二人の時間は「演じなくていい唯一の居場所」になっているのだと感じます。
ラストの公民館での再会フラグについても、期待が高まります。
ヨータがもし湊のような「攻略者」的な下心がなく、小雪と美姫のこの穏やかな空気を壊さない人物であれば、小雪の「城壁」にも少しずつ柔らかい光が差し込むかもしれません。
二人の友情にほっこりしつつも、新たな出会いへの緊張感が心地よく混ざり合ったエピソードでした。
「ヒーロー美姫」と「守られる小雪」の尊い原点
第8話で明かされた二人の幼少期のエピソードは、今の小雪にとって美姫がいかに絶対的な存在であるかを完璧に裏付けるものでした。
小学生時代の小雪にとって、自身の「小柄で可愛らしい容姿」は、愛情を注がれる対象ではなく、男子たちから無遠慮に弄ばれる「弱点」でしかありませんでした。
言葉による拒絶が一切通じない絶望的な状況下で、彼女が求めたのは「誰もがひれ伏すような圧倒的な力」。
そんな彼女の切実な祈りに応えるように現れたのが、当時の男子よりも逞しく、物理的な力で小雪を守り抜いた「ヒーロー」美姫だったのです。
この原点があるからこそ、二人の絆は単なる「仲の良い友達」以上の、魂の深いつながりを感じさせます。
小雪が今、どれほど高く険しい「氷の城壁」を築いて他人を拒絶していても、美姫だけはその壁の内側に当たり前のように存在しています。
それは、美姫がかつて小雪の最も脆い部分を丸ごと背負って戦ってくれた、唯一無二の救世主だからに他なりません。
さらに胸を打つのは、高校生になった現在の二人の姿です。
かつては美姫が「力」で小雪を守りましたが、今は小雪が「知性(勉強)」で、テストという強敵に立ち向かう美姫を支えています。
守る手段は変わっても、「相手の困っていることを、自分の得意なことで補う」という関係性は当時のままです。
「ヒーロー」と「守られる側」という一方的な構図ではなく、成長とともに互いを助け合える対等なパートナーへと進化している二人の姿。
湊のような「外からの侵入者」が波風を立てる物語の中で、この二人の間にある揺るぎない原点は、読者にとっても、そして何より小雪自身にとっても、唯一無心の底から安心できる「心の聖域」として描かれていると感じました。
美姫の「自分探し」と、それを包み込む小雪の静かさ
第8話では、常に明るく振る舞う美姫が抱える「本当の自分が分からない」という切実な揺らぎと、それを隣で静かに受け止める小雪の空気感がとても印象的に描かれていました。
美姫は、周囲を笑顔にするための「理想の自分」を演じすぎるあまり、自分の本心がどこにあるのかを見失いかけています。
「今私超ポエッてた!」と騒がしく笑い飛ばすことでその不安を隠そうとしますが、それは彼女が他人の前で決して見せない、最も繊細で脆い部分です。
そんな彼女の迷いに対して、小雪は過剰に励ましたり、無理に答えを引き出そうとしたりはしません。
「留年したら弟と同じ学年だよ」という、あえて少しドライで日常的な言葉を投げかけることで、美姫を「考えすぎ」の淵から今の現実へと優しく引き戻しています。
小雪のこの「静かさ」は、美姫にとって最高の救いになっているはずです。
外の世界では「明るいムードメーカー」を求められる美姫も、小雪の前でだけは、勉強が手につかずに死にかけたり、ズーンと落ち込んだりする「かっこ悪い自分」をさらけ出すことができます。
小雪が何も言わずに隣にいて勉強を教えるという行為そのものが、「どんなあなたでも、ここにいていいんだよ」という無言の肯定になっているからです。
かつて美姫が力で小雪を守ったように、今は小雪がその「変わらない静かな場所」を提供することで、揺れ動く美姫の心を支えています。
自分のアイデンティティに悩む美姫と、自分を守るために壁を築いた小雪。
形は違えど、二人とも「本当の自分」をどう守るかという課題を抱えています。
この二人が、公民館という新しい環境で、自分たちの「聖域」を守りながらどう成長していくのか。
言葉にしなくても通じ合う、この静かで深い信頼関係が、これからの物語を支える大きな柱になるのだと感じさせるエピソードでした。
公民館で交差する「平穏」と「新たな出会い」
第8話の終盤、小雪と美姫が約束した「公民館での自習」という何気ない日常の予定が、物語を動かす大きな転換点になる予感を与えてくれました。
小雪にとって、美姫と同じ団地に住み、二人きりの空間で過ごす時間は、過去のトラウマから解放される唯一の「平穏」なひとときです。
しかし、その安息の地から一歩外へ出た「公民館」という半公共の場は、彼女の城壁が試される場所でもあります。
そこで待っているのが、これまでの「踏み込んでくる男子」とは一線を画す雰囲気を持つヨータであるという点が、非常に意味深です。
ヨータは、湊と一緒にいながらも、どこか客観的で穏やかな空気感を纏っています。
彼が公民館で熱心に勉強している姿からは、湊のような「他人を攻略したい」というエゴよりも、自分自身の生活や目標を大切にする「自立した静かさ」が感じられます。
もし彼が、小雪が最も嫌う「土足での侵入」をせず、美姫のように自然に隣に座れるような存在だとしたら、それは小雪にとって、初めて「外の世界」で見つける新しい居場所になるかもしれません。
しかし、同時に不安もよぎります。
小雪にとって、美姫との時間は二人だけの完璧な「聖域」です。そこに他校の女子を何人も作る湊の親友であるヨータが介入してくることは、平穏を乱すリスクでもあります。
「公民館」という、家でも学校でもない第3の場所。
そこで、小雪の「平穏」を守りたいという願いと、ヨータという「新たな出会い」がどのように交差するのか。
湊が企む「鍵師」としての強引なアプローチとはまた違う、静かで、それでいて決定的な変化がここから始まるのではないかという期待に胸が膨らみます。
以上、第8話「幼馴染」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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