今回は、「氷の城壁」第34話「個」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第33話「狐」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第34話「個」のあらすじネタバレ
第34話は陽太の過去編と彼の孤独な小学生時代が描かれていく事となります。
母親を早くに失い、周りの子と隔たりを感じていた陽太と、母親のいない彼にとって、母親の存在は自分が孤独だと感じてしまう存在になっていました。
仕方が無い事だと解っていても、どうしようもない虚無感だけは拭えずに、他人の母親を羨ましく思っていた陽太。
そして義理の母親となるあかりとの出逢いは、彼の孤独を埋めてはくれませんでした。
自分だけが蚊帳の外にいるような感覚に囚われ、弟や妹が産まれ、より孤独や閉塞感を感じていった陽太にとって、自分の存在があるのかと感じていました。
まるでテレビでも見ているような孤立感。
自分がここにいても良いのかと、感じてしまう孤独を告白する陽太の言葉に、小雪も共感していました。
私でよければ相談してと、彼の孤独を受け止めてくれる小雪に、陽太は自分の抱いていた想いを告げてしまいます・・・
以上、第34話「個」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第34話「個」のネタバレ感想考察
今回のエピソードで最も印象的だったのは、陽太が抱えていた「テレビを見ているような孤立感」という言葉です。
自分の家であり、目の前には温かい家族がいる。
それなのに、自分だけが透明な壁の向こう側からその幸せを眺めているような感覚。
新しい母親や弟妹という「新しいピース」が揃えば揃うほど、亡き母の記憶を持つ自分だけが、その完成されたパズルの中に居場所を見つけられなくなっていく。
その閉塞感は、どれほど過酷なものだったでしょうか。
陽太が誰にでも明るく振る舞っていたのは、そうすることでしか「家族という番組」の登場人物として自分を維持できなかったからなのかもしれません。
そんな彼が、同じ「不必要な存在」という痛みを知る小雪に対し、ついにその透明な壁を壊して本音をさらけ出した。
小雪の「私でよければ相談して」という言葉は、孤独な観客席にいた陽太の手を引き、現実の世界へと連れ出す救いの手のように見えました。
ラストの陽太の告白は、単なる好意を超えた、命綱を掴むような切実な響きを感じさせます。
透明な壁の向こう側、陽太が耐え続けた「傍観者」の孤独
陽太が感じていた「テレビを見ているような孤立感」という表現は、この物語において最も残酷で、かつ核心を突いた言葉でした。
実の母親を失い、家の中に「あかり」という新しい光が差し込んでも、彼にとってはそれが自分を照らすものではなく、「他人の幸せな家庭」を映し出すモニターを見せられているような感覚だったのでしょう。
食卓を囲み、笑い声が響くほどに、「本来そこにいるべき自分」と「今の自分」の乖離が深まっていく。
弟や妹という、新しい家族の象徴が生まれるたびに、陽太の傍観者としての立場はより強固なものになってしまいました。
誰からも愛されているように見えて、実は誰とも本当の意味で繋がっていない。
明るい笑顔は、その「透明な壁」を周囲に悟らせないための高度なカモフラージュだったのです。
そんな彼が、ついに「自分はここにいても良いのか」という震えるような本音を小雪に吐露したことは、彼が人生で初めて壁の向こう側から手を伸ばした、決定的な瞬間だったと感じます。
埋まらない欠落、新しい家族の中で加速する陽太の疎外感
陽太にとって、新しい家族の「完成度」が上がれば上がるほど、皮肉にも彼自身の「欠落」は際立っていったのですね。
あかりさんが良い人で、弟や妹が可愛ければ可愛いほど、陽太は自分の中に残る「亡き母の記憶」をどう扱えばいいか分からなくなっていったのでしょう。
今の幸福な風景に自分を馴染ませることは、死別した実の母親を裏切るような、あるいは自分のルーツを消し去るような、言語化できない恐怖があったのかもしれません。
弟や妹が屈託なく父親やあかりさんに甘える姿は、陽太にとっては「自分が持てなかった特権」を見せつけられる光景です。
その中心に居場所がないと感じる閉塞感は、家という最もリラックスすべき場所を「舞台」に変え、彼に「明るい兄」という役を演じさせ続けました。
この「埋まらない欠落」を抱えながら、誰にも悟られないよう笑い続けてきた陽太の精神的な限界。
それを小雪が見抜いてくれたことは、彼にとってどれほどの衝撃と救いだったか。
第34話のラストでの告白は、そんな積み重なった疎外感から解き放たれたいという、魂の叫びそのものだったように感じます。
魂の救済、小雪の言葉が溶かした陽太の凍てつく虚無感
小雪が掛けた「私でよければ相談して」という言葉は、陽太にとって、暗闇の中で初めて自分を見つけてくれた「唯一の光」だったのでしょう。
これまで陽太の周りにいた人々は、彼の「明るい仮面」に騙され、あるいはその完璧さに甘えてきました。
しかし、自分自身も「不必要な存在」として凍りついた時間を過ごしてきた小雪だけは、彼の笑顔の裏にある絶対的な虚無感を見逃しませんでした。
「相談して」という言葉は、単なる同情ではありません。
それは、陽太がずっと隠してきた「汚い感情」や「情けない孤独」を丸ごと引き受けるという、覚悟の伴った魂の抱擁です。
自分を不必要だと思い込んでいた小雪が、誰かの欠落を埋める「必要な存在」になれた瞬間でもあり、この時、二人の孤独は互いを補い合う「ピース」へと変わったのだと感じます。
だからこそ、陽太の告白は単なる恋心ではなく、「君なしではもう、この透明な壁の中で息ができない」という切実な救済の要請だったのではないでしょうか。
以上、第34話「個」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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