今回は、「氷の城壁」第30話「新学期」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第29話「制御エラー」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第30話「新学期」のあらすじネタバレ
新学期を迎える事となった第30話は「新学期」と、小雪達は新たな時期を迎えようとしていました。
湊は陽太と仲良くしている小雪の関係が面白くなく、二人の仲を妙に勘ぐってしまいます。
そして小雪は新学期を迎えたことで、新しい役職を得てしまいます。
それは図書委員と、部活に入っていない小雪に白羽の矢を立てられてしまい、美術部の霜島と図書委員の仕事をすることとなり、美術部だから暇だからいけるだろうと、勝手な決めつけで決められてしまった事を、うっかりと小雪に愚痴ってしまい、不快な思いをさせてしまったかと謝りますが、小雪も霜島の不愉快な気持ちを受け止め、決めつけで決められる事を怒ってくれました。
そんな小雪に共感を覚えた霜島。
新しい出逢いは、小雪に何をもたらしていき、そして陽太と小雪の関係に悩む湊は、何を思うのでしょうか?
以上、第30話「新学期」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第30話「新学期」のネタバレ感想考察
今回のエピソードを読んで強く感じたのは、湊がこれまで抱えてきた「生きづらさ」の正体です。
両親から「素直な良い子」と評されていた彼は、実は自分の感情を表現すること自体を「無駄な衝突」として切り捨てていました。
兄・海斗の激しさを反面教師にしすぎてしまった結果、彼は誰とも深く関わらない「無機質な安全圏」に閉じこもってしまったのでしょう。
特に印象的だったのは、過去の彼女たちとの別れのシーンです。
湊は「物分かりの良さ」を誠実さだと勘違いしていましたが、実はそれが相手を最も深く傷つける「無関心」という名の暴力だった。
相手が感情的になるのは、それだけ湊を愛し、ぶつかり合いたかったからなのに、彼はそれを「制御できない未熟さ」としてしか見られなかった。
その決定的なズレが、彼の孤独をより深いものにしていたのだと思います。
そんな彼が、小雪を前にして「感情を抑えられない自分」に戸惑う姿は、ようやく彼が自分の人生の主人公として「熱」を持ち始めた証拠です。
他人に興味がなかったはずの彼が、小雪という「他者」によってかき乱され、合理性を失っていく。
その不器用な変化こそが、彼にとっての本当の成長であり、恋なのだと感じ、胸が熱くなりました。
「良い子」の正体、湊が選び続けた空虚な平穏
「良い子」でいることが、湊にとっては自分を守るための唯一の正解だったのでしょう。
波風を立てないことは、一見すると大人で賢い生き方に見えます。
しかしその実態は、誰とも深く関わらず、傷つくリスクを徹底的に排除した「空虚な平穏」に過ぎませんでした。
自分の意志を持たず、周囲の期待に同調し続けることで、彼は自分自身を消し、静かな孤独の中に閉じこもっていたのだと感じます。
「衝突」を嫌い、合理的に振る舞うほどに、彼の心は誰の熱も届かない場所へと遠ざかっていきました。
両親が愛した「素直な湊」は、彼が自分を殺して作り上げた、中身のない殻のような存在だったのかもしれません。
その殻を、他ならぬ小雪という存在が今、内側から激しく突き破ろうとしている。
これまでの人生を全否定しかねないほどの激しい戸惑いは、彼がようやく「自分だけの心」を取り戻し始めた、苦しくも尊いプロセスなのだと強く感じました。
残酷な合理性、元カノたちが絶望した湊の無関心
湊の「合理性」は、恋愛という最も感情的な場において、凶器のように機能していました。
別れ話を切り出された際、湊が一度も引き止めず、怒りもせず、ただ「わかった」と淡々と受け入れたこと。
それは彼なりの誠実な対応のつもりでしたが、彼女たちにとっては、自分が彼の人生において「争う価値さえない存在」だと宣告されたも同然でした。
彼女たちが最後に叫んだ酷い言葉は、湊の鉄壁の理性を少しでも揺さぶり、自分への執着を引き出したかった、いわば最後のあがきだったのでしょう。
しかし、湊はそれすらも「なぜ感情を制御できないのか」と冷めた目で分析し、相手の心に踏み込むことを放棄してしまいました。
この「無関心」という名の残酷な合理性が、いかに相手の尊厳を削り、彼自身の世界を狭めてきたか。
その過去の積み重ねがあるからこそ、小雪の言動に一喜一憂し、合理的に割り切れない今の湊の「壊れっぷり」が、何よりも大きな変化として胸に刺さります。
崩れる鉄壁の理性、小雪が目覚めさせた本物の感情
湊にとって「理性を保つこと」は、自分という存在を定義するための最後の砦だったのかもしれません。
どれほど激しい言葉を浴びせられても、これまでは心の一線を越えさせず、常に客観的な「観測者」として他人と接してきました。
しかし、小雪との出会いは、その完璧に構築された防御システムを根底から狂わせてしまいました。
彼女の痛み、彼女の拒絶、彼女の小さな変化——。
それらの一つひとつが、合理性というフィルターを通さずに湊の心へダイレクトに突き刺さっています。
理屈では「深入りすべきではない」とわかっているのに、心が勝手に動き、制御不能な熱を帯びてしまう。
その戸惑いや苦しさは、湊がこれまでの人生でずっと避けてきた「生身の人間としての痛み」そのものです。
「鉄壁の理性」が崩れ去った後に残ったのは、泥臭くて、不器用で、けれど何よりも純粋な小雪への想いでした。
小雪が目覚めさせたのは、単なる恋愛感情ではなく、湊自身も気づいていなかった「誰かと深く繋がりたい」という本能的な叫びなのだと感じ、物語が大きな転換点を迎えたことを予感させます。
以上、第30話「新学期」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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