今回は、「氷の城壁」第15話「矢印」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第14話「4人」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第15話「矢印」のあらすじネタバレ
4人での勉強会。小雪は、先日ヨータにジュースを奢ってもらったお礼にと、みんなで食べるお菓子を用意していました。
ヨータから「今日の糖分提供係」と呼ばれ、和やかな空気が流れる中、中学時代から塾が同じだった湊・ヨータ・美姫の過去や学力差が垣間見える会話が繰り広げられます。
秀才であるヨータが「家が近いから」という理由で今の高校(明天高校)を選んだことに対し、湊は「指定校推薦のためにランクを下げた」といじわるな推測をぶつけます。
動揺して筆箱を派手に落とすヨータ。
その「おっちょこちょい」な姿を思い出し、思わず「ふふふ」と笑い声を漏らす小雪。
隣でそれを見た湊は、彼女が案外普通に笑うことに驚き、認識を改めます。
帰り道、一行は二組に分かれます。
湊は、晩飯の誘いを断り一人で公民館へ勉強しに行くヨータの背中を見送りながら、「あの子(小雪)はヨータが好き?」「ヨータはやめといた方がいいぞ」と意味深な言葉を独り言ちます。
一方、小雪は美姫から「いつから湊と知り合いだったのか」と詰め寄られます。
湊の話題になると余裕をなくす美姫の様子を見て、小雪は彼女が湊に対して抱いている「特別な感情」に気づき始めるのでした。
以上、第15話「矢印」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第15話「矢印」のネタバレ感想考察
4人の関係性が本格的に動き出し、タイトルの通りそれぞれの想いや視線が「矢印」となって交錯し始めた、非常に密度が濃くも不穏な予感を感じさせる回でした。
まず、勉強会での小雪の「糖分提供係」のエピソードがとても良かったです。
これまで「もらうばかり」だった小雪が、自分なりに考えてお菓子を用意し、みんなの役に立とうとする姿に彼女の心の成長を感じました。
ヨータのおっちょこちょいな姿を見て、思わず「ふふふ」と声を漏らして笑うシーンは、彼女の城壁が少しずつ、けれど確実に溶けていることを象徴していて、見守る側としても温かい気持ちになります。
一方で、後半の帰り道の描写は、これまでの明るい雰囲気から一転して「陰」の部分が際立ちました。
特に湊が放った「ヨータはやめといた方がいいぞ」という一言には、ゾクッとするような緊張感がありました。
高身長で優しく、頭も良い「完璧なヨータ」の裏側に、親友である湊だけが知っている闇や危うさがあるのか……。
一人夜の公民館へ向かうヨータのストイックすぎる背中が、湊の言葉と相まって、何か危ういもののように見えてくる演出が見事でした。
また、美姫の「矢印」に小雪が気づき始める展開も切ないです。
普段の明るさを失って小雪を問い詰める美姫の余裕のなさは、まさに恋をする女の子そのもの。
自分の感情には疎い小雪が、大好きな親友である美姫の異変を通して「恋心」という未知の矢印を認識し始めるという構成が、今後の4人の関係をより複雑に、そして切なくさせていきそうで目が離せません。
湊が放った爆弾「ヨータはやめといた方がいい」
第15話のラストで湊が放った「ヨータはやめといた方がいいぞ」という独り言は、まさに物語に波紋を広げる大きな爆弾でした。
これまで描かれてきたヨータは、高身長で顔も良く、成績優秀で誰にでも優しい「非の打ち所がない人気者」です。
しかし、そんな彼を中学時代から知る親友の湊が、あえて警告のような言葉を漏らしたことで、読者はヨータという人間に潜む「別の顔」を予感させられます。
湊のこの言葉の真意は、ヨータが「性格が悪い」といった単純な二面性を指しているのではないように感じます。
むしろ、勉強会で指摘された「あえて志望校を下げた」疑惑や、一人で黙々と公民館へ向かう過剰なまでのストイックさなど、彼が自分を追い込みすぎている「危うさ」を知っているからこその言葉ではないでしょうか。
また、湊は小雪がヨータに抱いている感情を、彼女自身が自覚するよりも早く「恋心」の可能性として察知しています。
その上で「やめといた方がいい」と言うのは、ヨータと深く関わることで小雪が傷つく未来を、湊なりに予見しているのかもしれません。
完璧すぎるヨータの裏側に隠された、親友にしか見えない「歪み」や「闇」。
その正体が何なのか、そして湊がなぜこれほどまでにヨータに対して冷ややかな、あるいは心配そうな視線を向けているのか。今後の4人の関係を大きく揺るがす、あまりにも不穏で気になる引きでした。
「糖分提供係」小雪の笑顔と湊の変化
勉強会で小雪が「糖分提供係」としてお菓子を用意してきたエピソードは、彼女が「受け取る側」から「与える側」へと一歩踏み出した、とても尊い変化でした。
これまで他人との関わりを極力避けてきた小雪にとって、自分から誰かのために何かを用意するというのは、勇気のいる大きな挑戦だったはずです。
ヨータからその行動を「糖分提供係」というキャッチーな言葉で肯定してもらい、みんなで和気あいあいとお菓子を囲む時間は、彼女の閉ざされた城壁の中に、確かな温もりをもたらしました。
特に印象的だったのは、ヨータのおっちょこちょいな姿を思い出して「ふふふ」と自然に笑ったシーンです。
取り繕った愛想笑いではなく、心の底から溢れたその純粋な笑顔は、隣にいた湊の心に大きなインパクトを与えました。
湊にとって、小雪は最初「何を考えているかわからない、ガードの硬い子」という観察対象に過ぎなかったはずです。
しかし、その彼女が案外普通に、しかもあんなに可愛らしく笑うことを知った瞬間、彼の中の小雪に対する認識が劇的に変わりました。
湊が「なんだ、笑うんだ」と自分の認識を改める描写は、彼自身が小雪という一人の人間に、本当の意味で関心を持ち始めたきっかけのように感じます。
小雪の小さな一歩が、自分自身の殻を破るだけでなく、周囲の「矢印」の向きさえも変えていく。そんな静かだけれど力強い変化を感じさせる、素敵な一幕でした。
美姫の「矢印」と小雪の気づき
第15話において、最も切なくも鋭い変化を感じさせたのが、美姫から湊へと向けられた「矢印」と、それを察知した小雪の視点でした。
普段は誰に対しても明るく、サバサバとした姉御肌の美姫。
しかし、湊のことになると途端に余裕をなくし、小雪との接点を問い詰めるときの表情は、隠しきれない独占欲と不安に満ちていました。「なんて話しかけられたの?」と詰め寄る必死な姿は、これまでの「頼れる美姫」ではなく、一人の恋する少女としての危うさを露呈しています。
そんな美姫の変化を、小雪が(もしかして……)と直感的に気づくシーンが非常に印象的です。
小雪は自分の感情には疎いタイプですが、大好きな美姫が自分に向ける真っ直ぐな優しさを誰よりも知っているからこそ、その美姫が放つ微かな「心の揺れ」を敏感に拾い上げてしまいました。
美姫が湊を想い、湊は小雪の笑顔に興味を持ち始め、小雪はそんな二人の関係性を察知して一歩引こうとするかもしれない――。
タイトルの「矢印」が示す通り、誰かの想いに気づくことが、必ずしも幸せな結末だけを連れてくるとは限らないという予感が漂います。
親友の「矢印」の先を知ってしまった小雪が、これから自分の居場所や振る舞いをどう変えていくのか。
友情と恋心が複雑に絡み合う、思春期のヒリつくような展開の幕開けを感じさせる場面でした。
以上、第15話「矢印」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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