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「氷の城壁」第13話「融雪」のネタバレ感想考察

「氷の城壁」第13話「融雪」のネタバレ感想考察

今回は、「氷の城壁」第13話「融雪」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。

前話については、こちらの「氷の城壁」第12話「からっぽ」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

目次

「氷の城壁」第13話「融雪」のあらすじネタバレ

公民館での自習を終えた帰り道、美姫の「もっと勉強したい」という意欲に応え、ヨータは翌日の放課後に自分のクラス(6組)で勉強会をしようと提案します。

はしゃぐ美姫を見ていたヨータが電柱に激突する一幕もありつつ、賑やかな雰囲気で明日の約束が交わされました。

小雪は「6組はうるさそう」と密かに不安を感じますが、ヨータにその思考を読み透かされ、自分の殻が少しずつ剥がれていくような気恥ずかしさを覚えます。

ヨータと別れた後、小雪と美姫は電車に乗ります。

空いた一席をお年寄りに譲る際、美姫は「次で降りるから」と爽やかに嘘をつき、一度ホームに降りてから別の扉へ駆け込むという「粋で照れくさい優しさ」を見せます。

さらに美姫は、試験後に自分のバイト先のハンバーガーショップへ食べに来るよう小雪を誘い、「一人で来にくかったらヨータと来なよ」と背中を押しました。

その夜、自室に戻った小雪は、ふと窓に映った自分が笑っていることに気づき驚愕します。

人との関わりが増え、確実に「楽しい」と感じている今の自分。しかし同時に、「一人でいる方が楽」「放っておいてほしい」という、これまで自分を守ってきた拒絶の感情もまた、嘘偽りない本心として存在していました。

「楽しい」のに「関わりたくない」。相反する感情の矛盾に直面した小雪は、自分が本当はどうありたいのか、どうしたいのかが分からなくなり、暗い表情で深く考え込んでしまうのでした。

以上、第13話「融雪」のあらすじネタバレでした。

次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

まとめ記事

>>「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察

「氷の城壁」第13話「融雪」のネタバレ感想考察

第13話は、タイトルの「融雪」という言葉が示す通り、小雪の心を閉ざしていた氷が溶け出し、その下にある複雑な地面が露わになるような、切なくも美しい回でした。

まず、ヨータと美姫の「陽」のエネルギーが、小雪に新しい景色を見せていく過程がとても微笑ましかったです。

美姫に見惚れて電柱にぶつかるヨータのドジっ子ぶりや、善行を「カッコつけ」で隠す美姫の粋な嘘。

そんな二人の自然体な優しさに触れ、小雪が思わず笑顔になってしまうシーンには、読者としても救われる思いがしました。

特に、窓に映った「笑っている自分」に驚く描写は、彼女にとっての大きな変化を象徴する名シーンです。

しかし、物語の後半で描かれた小雪の心の葛藤が、あまりにもリアルで胸に刺さります。 

「楽しい」「また話したい」という前向きな感情と、「一人の方が楽」「関わりたくない」というこれまでの自己防衛的な感情。

この二つが矛盾したまま心の中に同居している状態は、まさに雪解けの時期のぬかるんだ道のようです。

小雪にとって「一人がいい」というのは、決して嘘ではなく、自分を守るために必死に守り抜いてきた大切な砦でした。

それを「楽しい」という新しい感情が壊し始めたとき、彼女が抱いたのは喜びだけでなく、「自分が自分でなくなってしまうような不安」だったのではないでしょうか。

自分の気持ちがわからない、どうありたいのかもわからない。

そんな暗い表情で終わった幕引きは、変化の過程にある痛みを描いていて、思春期の繊細な心理描写が光っていました。

美姫のバイト先にヨータと行くという「約束」が、彼女にとって光になるのか、それともさらなる葛藤の種になるのか。溶け出した心がどこへ向かうのか、目が離せません。

ヨータの「察する力」と美姫の「粋な優しさ」

ヨータと美姫、この二人が持つ「優しさの形」が、小雪の頑なな心を外側から柔らかく解きほぐしていく様子がとても心地よい回でした。

まず、ヨータの「察する力」の鋭さには驚かされます。

小雪が口に出さずとも、その表情の微かな陰りから「賑やかな場所への不安」を読み取り、先回りして安心させる。

彼の凄さは、それを「気を遣っている」と感じさせないほど自然に、さらりとやってのける点にあります。

電柱にぶつかるような抜けた一面を見せつつも、人の心の機微には誰よりも聡い。

そのギャップが、小雪にとっての「安心感」に直結しているのだと感じました。

そして、美姫の「粋な優しさ」もまた魅力的でした。

電車で席を譲る際、「次で降りる」と嘘をついて一度ホームへ出るという回りくどい行動は、相手に余計な気遣いをさせないための、彼女なりの照れ隠しと美学です。

善行を「良いこと」として押し付けず、ドタバタ劇に変えて笑い飛ばす美姫の明るさは、物事を深刻に考えがちな小雪にとって、世界の厳しさを忘れさせてくれる救いになっています。

この二人が、小雪の「城壁」を無理に壊そうとするのではなく、城壁の外側で楽しく騒いだり、門の隙間から温かいものを差し入れたりし続けてくれる。

そんな計算のない、見返りも求めない真っ直ぐな好意に包まれることで、小雪は初めて「誰かと一緒にいる自分」を肯定しかけているのだと、温かい気持ちになりました。

「楽しい」と「怖い」が同居する思春期のリアル

自室で窓に映った自分の笑顔を見て、小雪がどん底まで落ち込んでしまう描写には、思春期特有のヒリヒリとしたリアリティが詰まっていました。

普通なら「友達と仲良くなれて嬉しい」で終わるはずの場面ですが、小雪にとって「楽しい」という感情は、これまで自分を守り続けてきた「一人が楽」という防衛本能を脅かす、いわば侵入者のような存在です。

誰かと繋がる喜びを知ることは、同時に、その繋がりを失う恐怖や、相手に踏み込まれる危うさを引き受けることでもあります。

「一人でいたい」のも、「また明日も話したい」のも、どちらも嘘偽りない彼女の本当の気持ち。

その矛盾が、溶け出した雪のあとの泥濘(ぬかるみ)のように、彼女の足元を不安定にさせています。

自分が自分でなくなっていくような感覚。これまで築き上げてきた「氷の城壁」が崩れて、無防備な素顔が晒されていくことへの戸惑い。

幸せを感じるほどに、それと同じ分だけの不安が襲ってくる。そんな小雪の葛藤は、自分という存在が変化していく過程で誰もが経験する、成長痛のような切実さを孕んでいました。

「本当の自分」を模索する痛み

「本当の自分」を模索し始めた小雪の姿には、思春期特有の切実な痛みが伴っていました。

窓に映った自分の笑顔を見て驚くという描写は、彼女にとって「楽しんでいる自分」が、まだ自分自身のものとして受け入れられていないことを象徴しています。

これまでの小雪にとって、他人を拒絶し、一人でいることは「平穏を保つための唯一の正解」でした。しかし、美姫やヨータと過ごす時間の温かさを知ってしまったことで、その正解が揺らぎ始めています。

「一人でいたい」という拒絶の心と、「また明日も話したい」という親愛の心。この相反する感情が同時に存在することに、彼女は強い自己矛盾を感じ、苦しんでいます。

どちらか一方が嘘なのではなく、どちらも本心であるからこそ、その板挟みになってしまうのです。

この痛みは、変化を恐れる心が上げている悲鳴のようにも聞こえます。

城壁の内側で孤独に完結していた自分を捨て、誰かと関わることで生まれる「ままならない自分」を受け入れていく過程。それは、これまでの自分を一度壊すような作業であり、成長という名の一種の喪失感さえ伴います。

自分の本当の気持ちがわからないと暗い表情で考え込む姿は、まさに自分という存在を再構築しようともがいている証。

溶け出した雪がぬかるみを作るように、今はまだ足元が不安定で苦しい時期ですが、その葛藤こそが、彼女が「氷の城壁」の先にある本当の意味での自分自身を見つけるために必要な、大切なステップなのだと感じさせられました。

以上、第13話「融雪」の感想考察でした。

次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

まとめ記事

>>「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察

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