今回は、「氷の城壁」第73話「聴取―表」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第72話「曇雨天」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第73話「聴取―表」のあらすじネタバレ
第73話の始まりは、桃香の電話から始まります・・・
相手は湊と、どうやら彼をデートに誘おうとしています。
友達の軽音ライブがあるので、一緒に行かないかと誘う桃香ですが、当の湊はそれがデートの誘いとは気づかず、他にも友達を誘おうと言ってしまいます。
少し残念な気持ちでうなだれてしまう桃香・・・でも湊をデートに誘うことに成功したと喜んでいました。
そんな桃香は、陽太達に湊とデートに行くと自慢してきます。
それを聞いた陽太は湊を食事に誘い、桃香と付き合うのかと尋ねてきます。
当の湊本人は付き合う気など無い様子ですが、桃香はそうではない様子。
小雪の気持ちを知っている陽太は、複雑な気持ちを抱いていました・・・
以上、第73話「聴取―表」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第73話「聴取―表」のネタバレ感想考察
第73話は、美姫と陽太の間に流れていた重苦しい沈黙を、桃香という「強欲な嵐」が強引に掻き回していく、非常にエネルギーの強い回となりました。
物語は桃香の仕掛けた一本の電話から動き出しますが、そこで描かれるのは、恋をゲームのように攻略しようとする桃香の「攻め」と、その攻撃を無意識の盾で全て無効化してしまう湊の「天然の防御」という、滑稽ながらも危ういパワーバランスです。
湊にとっては単なる日常の一コマに過ぎないやり取りが、桃香の手によって「湊とのデート」という既成事実にすり替えられ、それが陽太や小雪の耳に入っていくことで、グループ全体の波紋が大きく広がっていく様子が克明に描かれていました。
「無自覚な拒絶」が招く執着の連鎖
湊のあまりの鈍感さが、もはや一つの凶器のように感じられるエピソードでした。
桃香が勇気を振り絞って提示した「軽音ライブ」という、二人きりになれる絶好のシチュエーション。
それに対し、湊は一点の曇りもない笑顔で「他にも友達を誘おう」と返してしまいます。
桃香にとっては心臓が止まるような一大事でも、湊にとっては「大勢で楽しむイベント」の延長線上に過ぎません。
しかし、この湊の「誰に対しても平等で、打算のない優しさ」こそが、独占欲の強い桃香をさらに燃え上がらせる油となっています。
自分の魅力が通用しない、思い通りにコントロールできない。その苛立ちが、桃香を「デートに成功した」という極端なプラス解釈へと突き動かし、周囲に自慢することで外堀を埋めようとする強引な行動へと繋がっていきます。
湊の悪気のない拒絶が、皮肉にも桃香の執着を最悪の形で加速させていく様子には、見ていて冷や汗をかくような緊張感がありました。
桃香の「戦略的勝利」と歪んだ自己顕示
電話一本のやり取りを「湊をデートに誘うことに成功した」と定義し、それを即座に陽太たちに吹聴して回る桃香の姿には、彼女のなりふり構わぬ生存戦略が透けて見えます。
彼女は単に湊と仲良くなりたいだけでなく、周囲に対して「湊の隣にいるのは私だ」という既成事実を叩きつけ、小雪をはじめとする他者の介入を未然に防ごうとしているのです。
うなだれるほどのがっかり感を味わいながらも、次の瞬間にはそれを「勝利」としてプレゼンする。
この桃香の凄まじいバイタリティと、自分の「可愛い」という武器を信じて疑わない強固な自意識は、内向的な小雪にとってはまさに天敵と言えるでしょう。
彼女が自慢を繰り返すたびに、湊と小雪の間の見えない境界線がさらに分厚くなっていく。
桃香が放つ「自慢」の一言一言が、静かに物語をドロドロとした愛憎の色に染め上げていく演出は、非常にスリリングで圧倒されました。
陽太の献身と「見守る側」の限界
自身の失恋という深い傷跡が全く癒えていない中で、親友である湊の動向を案じて食事に誘う陽太の姿には、彼の持つ優しさの深さと、それゆえの痛々しさが同居していました。
湊を問い詰め、桃香との関係を確認しようとする行動は、決して野次馬根性ではありません。小雪の湊への切実な想いを知っており、同時に美姫との件で「関係が壊れる痛み」を誰よりも理解している陽太だからこそ、湊の不用意な行動が誰かを深く傷つけることを未然に防ごうとしたのでしょう。
自分の心は土砂降りの雨(曇雨天)のままで、立っていることさえ精一杯のはずなのに、それでも仲間の恋の行方を気にかけて奔走する。
湊の「付き合う気はない」という返答を聞いて安心するどころか、桃香の熱量の差を見て「複雑な気持ち」を募らせる陽太の表情は、あまりに献身的で、かつ孤独に見えました。
自分の問題は後回しにしてでも周囲の均衡を守ろうとする彼の騎士道精神が、この波乱の展開の中で唯一の良心であり、同時に最も危うい場所にあることを痛感させる回でした。
以上、第73話「聴取―表」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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