今回は、「氷の城壁」第55話「熱伝導」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第54話「熱量と色」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第55話「熱伝導」のあらすじネタバレ
早朝の通学シーンから始まる今回は・・・湊に自分の大好きな小説を褒められたことから始まります。
推理小説が大好きな小雪は、五十嵐ならつまらなそうと一蹴されてしまうのにと、興味を持ってくれた湊に嬉しそうに話題を振り、映画化された内容まで話していきます。
いつもとは違う笑顔を魅せてくれる小雪に、湊も嬉しそうに心を弾ませます。
そんな楽しそうな会話をする二人の中に割って入ってきたのが、秋音の友達の桃香でした。
湊に気があるのか、積極的に彼に話し掛けてくる彼女は、とんでもない爆弾発言をしてしまいます。
それは以前、背の高い男性と小雪が一緒にいたとの事。
その相手は陽太と、湊の気持ちはざわめきます。
桃香は新しいトラブルメーカーになるのでしょうか?
以上、第55話「熱伝導」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第55話「熱伝導」のネタバレ感想考察
第55話は、小雪が見せた「本来の輝き」と、それを一瞬で曇らせる「新たな不穏な影」の対比が鮮烈な回でした。
まず、湊に好きな小説を褒められて目を輝かせる小雪の姿が、あまりに眩しくて胸を打ちます。
五十嵐なら一蹴していただろう趣味を、湊が真っ向から肯定してくれた。
その事実だけで彼女の「城壁」がふわりと解け、映画の話まで夢中で語ってしまう。
このシーンは、彼女が求めていたのは大げさな愛の告白などではなく、ただ自分の好きなものを一緒に大切にしてくれる「静かな理解」だったのだと再確認させてくれました。
しかし、その温かな空気を切り裂くように現れた桃香の存在は、読者に強い警戒心を抱かせます。
湊への積極的なアプローチだけでも波乱の予感がしますが、「背の高い男性(陽太)と小雪が一緒にいた」という情報を、このタイミングで、あえて湊の前で投下するやり方は、あまりに計算高い「爆弾」です。
小雪がようやく見せ始めた笑顔を、再び過去の騒動のような不信感で塗りつぶそうとする桃香。
彼女が秋音の友人であるという点も相まって、せっかく芽生えた小雪と湊の絆をかき乱す、新たなトラブルメーカーとしての恐ろしさを十二分に感じさせるエピソードでした。
小説が繋いだ二人の笑顔
湊に趣味を肯定され、堰を切ったように好きな小説の話をする小雪の姿は、これまでの重苦しい過去を知っているからこそ、読者の心に深く染み入る名シーンでした。
「五十嵐くんなら一蹴していた」という独白が、彼女がいかに自分の内面を否定され続けてきたかを物語っています。
湊が向けたのは、熱烈な求愛ではなく「君が好きなものに興味がある」という対等な関心でした。
その柔らかな優しさが、分厚い城壁を溶かし、小雪から「映画化された内容まで話してしまう」という能動的な行動を引き出したのだと感じます。
湊の弾む心と、小雪の本来の年相応な笑顔。二人の間にある「推理小説」という共通言語が、どんな過去のトラウマよりも強く、今この瞬間の二人を繋いでいる。そんな温かさに満ちたやり取りが、直後に訪れる不穏な展開をよりいっそう際立たせていました。
城壁を溶かす静かな理解
湊が示したのは、小雪の「外見」や「記号的な価値」ではなく、彼女の「内面にある世界」への純粋な敬意でした。
それが、何層にも塗り固められた小雪の城壁を、外から壊すのではなく内側から優しく溶かしていったのだと感じます。
五十嵐のような強引なアプローチは、小雪にとっては城壁をより高く厚くさせる「攻撃」でしかありませんでした。
しかし、湊の「君が好きなものをもっと知りたい」という静かな理解は、彼女に「自分を出しても拒絶されない」という絶対的な安心感を与えました。
推理小説という、彼女が大切に守ってきた聖域。そこに湊を招き入れ、楽しそうに言葉を重ねる小雪の姿は、傷つく前の彼女が持っていたはずの純粋さを取り戻したかのようでした。
この「静かな理解」こそが、彼女にとっての本当の救いであり、二人の距離を誰よりも近くに引き寄せた決定的な瞬間だったと言えます。
桃香が投下した不穏な爆弾
桃香が放った言葉は、ようやく解け始めた小雪の心を再び凍りつかせ、湊の信頼を根底から揺さぶる、まさに破壊的な「爆弾」でした。
湊と小雪が共有していた、小説を巡る温かく清らかな時間。
桃香はそれを「陽太」という別の男の影をちらつかせることで、一瞬にして邪推と不安が渦巻く空気へと変質させてしまいました。
特に、小雪が過去に「無責任なはやし立て」で傷ついた経験があることを思うと、桃香のこのデリカシーを欠いた(あるいは計算ずくの)発言は、小雪を再びあの「歪んだ日常」へと引き戻しかねない危うさを持っています。
湊にとっても、陽太という存在は親友でありながら、どこか拭いきれない劣等感や焦燥感を抱かせる相手です。その陽太と小雪が「二人でいた」という情報は、彼の独占欲や疑念を容赦なく刺激したはずです。
桃香の背後に見える秋音の影も含め、この爆弾が単なる勘違いで終わるのか、それとも二人の絆を粉々に砕く引き金になるのか。あまりにも不穏で、心拍数が上がるような幕切れでした。
以上、第55話「熱伝導」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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