今回は、「氷の城壁」第36話「矢印(2)」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第35話「ナイショ」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第36話「矢印(2)」のあらすじネタバレ
今回のお話では湊と陽太の出逢いが描かれていくところからのスタートとなります。
中学時代に親友となった湊と長く付き合っている陽太は、彼は気さくな人間だと知っていますが、時に距離を置く事があり、そして様子がおかしくなったのは陽太が美姫に恋心を抱く様になった頃です。
陽太の美姫に対する想いを察するも、自分の気持ちを告白することなく、内に秘めたまま、友達として過ごしている陽太の姿に、湊はただ想い続ける事で良いのかと考えていました。
好きなら告白すれば良いのにと、不器用な彼の恋愛に不安を抱いていた湊。
そんな陽太が、まさか小雪と仲良くなってしまうなんてと、驚きを露わにしていました。
陽太が好きなのは美姫だった筈・・・なのに小雪と仲良くなっていると、二人の距離感が近い事に戸惑いを隠せませんでした。
そして妙にざわついてしまう気持ちと、小雪を前にして、落ち着きがなくなってしまう湊。
彼は自分の気持ちに気づけているのでしょうか?
以上、第36話「矢印(2)」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第36話「矢印(2)」のネタバレ感想考察
第36話は、これまで物語を冷徹なほど客観的に眺めていた湊の「視界」が、ついにぐにゃりと歪み始める決定的な回でしたね。
中学時代からの親友である陽太の「不器用な片想い」を、どこか冷めた、あるいは呆れたような目で見守ってきた湊。
彼にとって陽太の恋は、自分には理解しがたい「非合理な停滞」に見えていたのかもしれません。
しかし、そんな陽太が、あろうことか「自分のテリトリー」にいるはずの小雪と急速に距離を縮めたことで、湊の心のダムが決壊し始めました。
陽太が好きなのは美姫のはずなのに、なぜ小雪とあんなに親密そうにしているのか。
その矛盾への戸惑いは、やがて「小雪を誰かに奪われるかもしれない」という、彼自身が最も避けてきたはずの生々しい独占欲へと形を変えています。
小雪を前にして落ち着きを失う湊の姿は、彼がどれだけ自分の感情に無頓着、それは無意識に蓋をしていたかを物語っています。
他人の恋愛には「告白すればいいのに」と合理的な答えを出せていた彼が、いざ自分の身にそれが降りかかった瞬間、最も非合理で、不器用な振る舞いを見せてしまう。
この皮肉な逆転現象がたまりません。
湊はまだ、この「胸のざわつき」の正体に気づいていないのかもしれません。
しかし、彼が「親友である陽太」を、初めて「一人の男」として、そして「恋のライバル」として意識し始めたことで、物語はこれまでの静かな心理戦から、より激しい感情のぶつかり合いへとステージを変えていく予感がします。
湊を襲う初めての焦燥感
湊にとって、これまでの人生はすべてが自分の計算通り、あるいはコントロール可能な範囲に収まっていたはずです。
しかし、第36話で描かれた彼の姿は、その完璧な「盤面」が足元から崩れていくような、初めての焦燥感に満ちていました。
陽太の美姫への片想いを「不器用だ」と傍観していた頃の湊には、圧倒的な余裕がありました。
しかし、その陽太が自分の理解を超えた動きを見せ、あろうことか小雪と「二人だけの空気」を作り出している。この事実は、湊の冷徹な合理性を一瞬で粉砕してしまいました。
「陽太の好きな人は美姫のはずだ」という理屈で自分を納得させようとしても、目の前で小雪と親密に過ごす陽太の姿に、心が激しくざわついてしまう。
この「理屈が感情に負ける」経験こそが、湊にとっての初めての挫折であり、恋の始まりでもあります。
小雪を前にして落ち着きを失う姿は、彼がこれまで大切に守ってきた「幼馴染」という安全な距離感が、実は執着という名の薄氷の上にあったことを突きつけています。
親友を信じたい気持ちと、小雪を独占したい本能。
その狭間で余裕を失い、もがき始めた湊の人間臭い焦りは、物語をよりいっそう深く、スリリングなものにしています。
陽太の「心変わり」という誤算
湊にとって、陽太という存在は「美姫を一途に想い続ける不器用な親友」という明確なカテゴリーに分類されていました。
その確信があったからこそ、湊は陽太と小雪が接触することに何の警戒も抱いていなかったのでしょう。
しかし、その前提が崩れた瞬間の衝撃は凄まじいものでした。
湊の目には、今の陽太が美姫への想いを捨て、ターゲットを小雪に変えた「心変わり」をしたように映っています。
自分が「告白すればいいのに」と冷ややかに見守っていた親友の不器用さが、牙を剥いて自分の大切な居場所を侵食し始めた——。
この予測不能な事態こそ、合理性を重んじる湊が最も恐れていた「誤算」です。
「陽太は美姫が好きだから大丈夫だ」という心の防波堤が決壊し、代わりに溢れ出したのは、自分でも制御できないほどの強い独占欲でした。
皮肉なのは、陽太の心は変わるどころか、小雪に打ち明けたことでより一層、美姫への想いを深めているという点です。
真実を知らない湊だけが、自分勝手な誤算に振り回され、独りで焦り、小雪との関係を危うくしていく。この「知っている読者」と「疑心暗鬼になる湊」のコントラストが、物語の緊張感を最高潮に高めています。
小雪を前に揺らぐ湊の独占欲
湊にとって小雪は、自分が保護し、導き、その内面をすべて把握しているべき存在でした。
しかし、今の彼は、自分の知らない言葉を陽太と交わし、自分の知らない表情を見せる小雪を前にして、かつてないほど激しく揺さぶられています。
これまでの湊なら、たとえ嫉妬を感じたとしても、それを「非合理的だ」と切り捨て、スマートに振る舞うことができたはずです。
しかし、今の彼を突き動かしているのは、頭で理解できる論理ではなく、もっと泥臭く、形も定まらない剥き出しの独占欲です。
陽太との親密な様子を見せつけられ、焦燥感に駆られる中で、彼は自分でも無意識のうちに小雪を強く繋ぎ止めようとしてしまいます。
それは優しさの皮を被った「執着」であり、彼女の自由を奪いかねない危うさを孕んでいます。
小雪を前にして落ち着きを失い、余裕のない態度を見せてしまう湊。
その姿は、彼がどれほど深く小雪に依存していたかを露呈させると同時に、二人の「幼馴染」という均衡が、彼の独占欲によって今まさに壊れようとしていることを予感させます。
以上、第36話「矢印(2)」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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