今回は、「氷の城壁」第72話「曇雨天」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第71話「結び」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第72話「曇雨天」のあらすじネタバレ
第72話・・・陽太の告白を断ってしまった美姫。
罪悪感に苛まれながら学校に来るも、陽太は変わらずに自分に接してくれると、その優しさが辛いと落ち込んでいました。
友達関係を壊したくないと、今のままで良いと、今まで男性と付き合っても、理想の女性ではないと、一方的な理由でフラれてきた美姫にとって、付き合う事は、とても苦な事でした。
彼の心を踏みにじってしまったと、さらに落ち込んでしまう美姫ですが、そんな彼女を心配して湊が話し掛けてきます。
優しい湊と、美姫はそんな彼に問いかけてきます。
それは湊も告白した人を拒絶した事があるか、と。
問いに湊は、ないと答えます。
理由は断る理由がなかったからと、湊の言葉に美姫は続けます。
「付き合うんじゃなかったって思ったりしない」
と、美姫は今まで経験してきた、相手を失望させてしまい、破局した経緯を語ります。
そんな美姫に湊はどう応えるのでしょうか?
以上、第72話「曇雨天」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第72話「曇雨天」のネタバレ感想考察
第72話は、陽太の決死の告白に対して「拒絶」という痛ましい選択をした後の、美姫の心の内側を支配するドロドロとした葛藤が描かれました。
タイトル「曇雨天」が象徴するように、雨が上がっても彼女の心には湿り気を帯びた厚い雲が居座り続け、自分自身を許せないという呪縛が彼女を蝕んでいきます。
何より残酷なのは、告白を断られた側であるはずの陽太が、以前と変わらぬ笑顔で、何事もなかったかのように美姫に接してくれることです。
その「聖人君子のような優しさ」こそが、今の美姫にとっては自分自身の冷酷さや身勝手さを照らし出す鋭いナイフとなって突き刺さります。彼を傷つけた事実は変わらないのに、その彼に救われてしまう自分。
そんな救いようのない矛盾に喘ぐ彼女の痛みを、湊という公平な視点を持つ存在が静かに聞き出すことで、物語は単なる失恋の余波を超え、美姫という少女の根底にある「対人恐怖」の本質へと迫っていきました。
優しさが剥き出しにする「罪悪感」の刃
陽太が以前と変わらぬ態度で接してくれることは、普通であれば救いになるはずですが、美姫にとってはそれがかえって自分を追い詰める凶器となっていました。
もし陽太が怒り、彼女を避け、軽蔑してくれたなら、彼女はその報いを受けることで罪悪感を相殺できたかもしれません。
しかし、彼がこれまで通り、あるいはこれまで以上に優しく接することで、美姫は「こんなに素晴らしい人の心を踏みにじってしまった自分」という醜悪な自己像を直視せざるを得なくなります。
彼に笑いかけられるたびに、自分の内面にある身勝手な拒絶が浮き彫りになり、学校という日常の空間すべてが彼女を責め立てる「公開処刑の場」のように感じられる。
その息の詰まるような自責の念の描写は、読んでいて胸が痛くなるほどのリアリティを持っていました。
過去に刻まれた「期待」という名の呪い
美姫が「付き合う」という行為に対して抱いている異常なまでの拒絶反応は、彼女の過去に深く根ざしていました。
外面が良く、明るく振る舞う彼女は、男子から「理想の女の子」としての虚像を押し付けられ、その期待に応えられなくなった瞬間に「思っていたのと違う」と一方的に失望され続けてきたのです。
彼女にとって、交際とは「いずれ訪れる失望へのカウントダウン」であり、大切な相手であればあるほど、その終焉の痛みは耐え難いものになります。
陽太との友人関係を壊したくないという願いは、彼を好きではないからではなく、むしろ彼を失うことが怖すぎて、一歩も踏み出せないという悲しい自己防衛の結果でした。
美姫の中にある「理想の自分」という仮面が、今、彼女自身の幸せを阻む重い枷となっている様子が痛切に伝わってきます。
湊の「断る理由のなさ」が突きつける真理
美姫の問いに対する湊の「断る理由がなかった」という答えは、あまりにも純粋で、だからこそ美姫の複雑に絡み合った心を激しく揺さぶりました。
美姫が「いつか嫌われること」を前提に愛を拒んでいるのに対し、湊は「今、目の前にある好意」を真っ直ぐに信じようとしています。
未来の破局を恐れて現在を殺す美姫と、現在を積み重ねることで未来を信じようとする湊。
この対照的な二人の会話から、美姫は自分がどれほど「まだ起きてもいない不幸」に縛られ、自分自身の価値を低く見積もっていたかを突きつけられることになります。
湊の無垢な恋愛観は、美姫の凝り固まった防衛本能に楔を打ち込み、彼女が抱えてきた「愛される恐怖」の正体を静かに暴き出していました。
以上、第72話「曇雨天」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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