今回は、「氷の城壁」第54話「熱量と色」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第53話「回転」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第54話「熱量と色」のあらすじネタバレ
今回のお話は小雪が五十嵐に告白された頃からスタートします。
なんで自分が告白されてしまったんだろうと、五十嵐の告白を素直に喜べることはなく、握られてしまった手を早く離して欲しいと、そんな事を思ってしまうほど、彼女は五十嵐が苦手でした。
彼が良い人間だとは解っていても、素直に受け入れる事のできない存在でした。
自分とは価値観が違うと、正反対の存在に思えてしまう五十嵐。
彼がなんで自分なんかを好きになってしまったんだろうと、答えが出ない悩みを抱えたまま、時間だけが進んでいきます。
周囲に五十嵐に告白されたことを知られ、無責任にはやし立てられてしまうなど、騒がしい日常になっていく中で、小雪の心は疲弊していき、彼女の学校生活は大きく歪んでしまったのです。
以上、第54話「熱量と色」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第54話「熱量と色」のネタバレ感想考察
第54話は、小雪にとって「好意」さえもが恐怖や苦痛の対象になり得たという、対人関係の難しさを突きつけられる非常に重苦しい回想回でした。
本来、誰かに好かれることは喜ばしいはずなのに、小雪にとっては「握られた手を早く離してほしい」と願うほどの苦痛でしかなかった。
その描写からは、五十嵐という存在が彼女のパーソナルスペースをどれほど無遠慮に侵食していたかが痛いほど伝わってきます。
五十嵐が「良い人間」であると理解しているからこそ、それを拒絶してしまう自分に罪悪感を抱き、さらに追い詰められていく小雪の心理描写は、読んでいて胸が締め付けられるようでした。
何より残酷なのは、二人の間の個人的な出来事が、周囲の「無責任なはやし立て」によって消費され、逃げ場のない騒音へと変わっていった点です。
価値観が正反対で、どうしても相容れない存在からのアプローチ。それが周囲の好奇の目に晒されることで、小雪の学校生活そのものが歪み、平穏が崩れ去っていく。
彼女にとっての「告白」は、ときめきなどではなく、日常を破壊する侵略行為に近かったのだと感じさせられます。
なぜ彼が自分を選んだのかという答えの出ない問いに悩み、心が疲弊していく小雪。
彼女が後に「城壁」を築くに至った理由の一つに、こうした「良かれと思って向けられる一方的な感情」への恐怖もあったのだと深く納得させられる、悲痛なエピソードでした。
苦痛へと変わった好意
五十嵐からの告白は、小雪にとって「光」ではなく、彼女の平穏を焼き尽くす「熱すぎる火」になってしまったのだと感じます。
相手に悪気がないと分かっているからこそ、それを拒絶することに罪悪感を覚え、逃げ場を失っていく過程が非常にリアルで残酷でした。
五十嵐の「良い人」という属性が、逆に小雪の逃げ道を塞ぎ、無理やり手を握られるという行為が彼女の境界線(パーソナルスペース)を土足で踏み荒らす暴力として描かれています。
「なぜ私なの?」という疑問に答えが出ないまま、自分とは正反対の価値観を押し付けられる恐怖。
それは、小雪が最も大切にしていた「静かな日常」が、誰かの身勝手な好意によって「騒がしい見世物」へと変質させられた瞬間でもありました。
好意という名の暴力が、一人の少女の心をここまで摩耗させ、学校生活そのものを歪めてしまった事実は、読んでいて息が詰まるような苦しさがありました。
無責任な喧騒と心の疲弊
五十嵐の告白そのもの以上に小雪を追い詰めたのは、それを「娯楽」として消費した周囲の無責任な反応でした。
当事者たちの気持ちなどお構いなしに、ただ面白いからとはやし立て、冷やかすクラスメイトたち。彼らにとっては日常のちょっとした刺激に過ぎなくても、注目を浴びること自体に恐怖を感じる小雪にとっては、全方位から石を投げられているような感覚だったはずです。
誰も自分の本当の困惑や苦しみに気づこうとせず、ただ「人気者に告白された幸運な女子」というレッテルを貼り付けてくる。
その一方的な決めつけが、彼女の心を一歩ずつ、確実に削り取っていきました。
どれほど嫌だと思っても、周囲の「盛り上がり」という大きな流れの中では、小雪の小さな拒絶の声はかき消されてしまう。
逃げ場のない教室という密閉空間で、無責任な喧騒に晒され続けた結果、彼女の学校生活は色を失い、ただ耐え忍ぶだけの時間へと変わってしまいました。
この時の疲弊があったからこそ、彼女は「他人と関われば、望まぬ騒動に巻き込まれる」という強い不信感を抱くようになったのだと感じます。
歪んでしまった日常
真夏との確執、そして五十嵐による一方的な好意。
これらが積み重なった結果、小雪にとっての学校生活は「学びや交流の場」から「自分を削り取る戦場」へと完全に歪んでしまいました。
本来なら安心できるはずの教室が、いつ誰に悪口を言われるか、あるいはいつ無責任な騒ぎに巻き込まれるか分からない、油断できない場所に変わってしまった。
この絶望感は、彼女の「普通」を根底から破壊しました。
自分の意志とは無関係に、周囲の身勝手な感情や憶測によって日常が塗り替えられていく恐怖。
その歪みの中で、小雪は「自分を消すこと」でしか、心の均衡を保てなくなったのだと感じます。
「城壁」とは、単に内気だから築かれたものではありません。
このような歪んだ日常を生き抜くために、彼女が必死に作り上げた唯一の聖域だったのでしょう。
以上、第54話「熱量と色」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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