今回は、「氷の城壁」第17話「掛け違い」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第16話「距離」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第17話「掛け違い」のあらすじネタバレ
昼休み、一人でいた小雪に同情して声をかけ、連絡先を聞き出した湊。
しかし、美姫の姿を見つけた小雪は、彼女の湊への想いを察して動揺し、逃げるようにその場を去ってしまいます。
湊の友人たちは小雪を「怖い」「睨んでいた」と評しますが、湊自身は、小雪がヨータにだけ見せる柔らかな笑顔と、自分に向ける拒絶的な表情の「差」が激しいことに気づき、彼女への興味を深めていきます。
放課後の勉強会中、湊は再び「彼氏いる?」とデリカシーのない質問を小雪に投げかけます。
五十嵐の影を警戒し身構える小雪でしたが、ヨータが「こゆんを狙うのはやめて」と「お父さん」役を買って出ておちゃらけたことで、場は冗談めいた空気に。
しかし、その様子を横で見ていた美姫は無表情で二人を見つめていました。
耐えかねた美姫は「糖分を買ってくる」と告げ、湊だけを指名して連れ出します。
自販機の前で、小雪にジュースを奢ろうとする湊に対し、美姫は不安と苛立ちが混ざったような表情で、核心を突く問いを投げかけます。
「ミナトってさあ、こゆんのこと、どう思ってんの?」
4人の視線と思惑が、タイトルの通りバラバラに「掛け違った」まま、物語は緊張感を増していきます。
以上、第17話「掛け違い」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第17話「掛け違い」のネタバレ感想考察
タイトルの通り、4人の間に流れる空気が絶妙にズレていき、それぞれの善意や好奇心が裏目に出てしまう「もどかしさ」が凝縮された回でした。
何より印象的だったのは、湊の視点から見た「小雪の表情の差」への気づきです。
読者は、小雪が美姫への気遣いや過去のトラウマゆえに湊を避けていると知っています。
しかし、内情を知らない湊にとって、自分には鉄壁のガードを張る小雪が、ヨータにだけは自然に笑いかける姿は「好きな人とそれ以外への態度の差」に見えてしまう。
この「残酷なまでの認識のズレ」が、今後の展開にどう影響するのかハラハラさせられました。
また、ヨータの立ち振る舞いにも変化を感じました。
「娘はやらん」とおちゃらけつつも、湊の攻勢をピシャリと制した時の笑顔には、どこか「貼り付けたような」不自然さがありました。
単なる友情以上の独占欲が、ヨータの中にも芽生え始めているのではないか……そう感じさせる一幕でした。
そしてラストシーン、ついに湊を連れ出して問い詰めた美姫。
普段の明るさをかなぐり捨て、不安を剥き出しにして「こゆんのこと、どう思ってんの?」と聞く姿は、見ていて胸が締め付けられます。
「大好きな親友」と「気になる人」が近づくことへの恐怖。
青春のキラキラした部分だけでなく、こうしたヒリつくような感情を逃げずに描いているところが、この作品の大きな魅力だと改めて実感しました。
湊が感じた「笑顔の差」と、残酷な誤解
第17話で湊が抱いた「好きな人と、それ以外の人の差、激しすぎない?」という実感は、今後の4人の関係をかき乱す非常に大きな「掛け違い」の種となりました。
湊の視点から見れば、その推測は極めて論理的です。
自分に対しては、連絡先を聞けば逃げ出し、話しかければ顔をこわばらせる小雪。
しかし一方で、ヨータと話す時は肩の力が抜け、自然に笑みをこぼしている。
この対比を目の当たりにすれば、「小雪はヨータが好きで、自分(湊)は眼中にない(あるいは嫌われている)」と解釈してしまうのも無理はありません。
しかし、ここには残酷な誤解があります。
小雪がヨータに笑うのは、彼が「無害で優しい人」だと確信し、ようやく城壁の一部を許したからです。
一方で、小雪が湊を避けるのは、湊が嫌いなわけではなく、「美姫の好きな(かもしれない)人」であり、さらに自分の過去の傷を知る人物と繋がっているため、「自分を守り、親友を裏切らないため」に必死に壁を作っているに過ぎません。
湊はこの裏事情を一切知らないからこそ、小雪の「拒絶」を単なる好意の有無として受け取ってしまいます。
この誤解が厄介なのは、「手に入らないものほど追いかけたくなる」湊の性質に火をつけてしまう可能性がある点です。
小雪がヨータを向いていると思えば思うほど、湊の中の「異分子」への好奇心は歪な形で膨らんでいくのかもしれません。
善意で動くヨータ、必死な美姫、そして核心を外したまま突き進む湊。小雪の「笑顔」ひとつが、4人の矢印をさらに複雑に絡ませていく展開に、胸がザワつかずにはいられませんでした。
「お父さん」ヨータの笑顔の裏側
湊が小雪に「彼氏いる?」と踏み込んだ際、ヨータが「こゆん狙うのはやめてね」「娘はやらん」とおちゃらけて見せたシーン。
一見、仲の良いグループ内の微笑ましいやり取りに見えますが、その時のヨータの「貼り付けたような笑顔」には、彼自身も無自覚な「独占欲」や「歪み」が滲んでいたように感じます。
ヨータにとって小雪は、自分が最初に「城壁」を崩し、心を通わせた大切な存在です。
彼は小雪がどれだけ繊細で、他人との距離感に慎重かを知っています。
だからこそ、土足で踏み込んでくるような湊の言動から彼女を守ろうとするのは「正義感」からくる行動なのでしょう。
しかし、その「お父さん」というポジションを自称することで、無意識に小雪を自分の管理下に置き、他の異性を排除しようとする独占欲を正当化しているようにも見えました。
また、湊から「あえて志望校を下げた」と指摘された際に見せた脆さや、一人でストイックに勉強に打ち込む危うさを抱えるヨータにとって、小雪の純粋な信頼は、彼の自己肯定感を支える重要な要素になっているのかもしれません。
単なる「お人好しの保護者」として振る舞いながらも、その笑顔の裏で、湊のような異分子が小雪に近づくことへの不快感や焦燥を必死に隠している。
ヨータの抱える「完璧な優等生」の仮面が、小雪という存在を巡って少しずつひび割れ始めているような、静かな執着を感じさせる場面でした。
美姫の爆発寸前の勇気
第17話のクライマックス、湊を連れ出して核心に触れた美姫の行動には、彼女が抱えてきた不安の大きさと、それを打ち破ろうとする必死な勇気が凝縮されていました。
普段の美姫は、誰よりも空気を読み、周囲を明るく照らす太陽のような存在です。
しかし、小雪と湊の間に流れる「自分だけが入れない空気」を察した時、彼女の中にあった「お姉さん役」としての余裕は完全に崩れ去りました。
小雪への友情と、湊への恋心。
その両方を失いたくないという恐怖が、彼女をあの衝動的な行動へと突き動かしたのだと感じます。
「糖分買ってくる」と席を立った時の不自然な明るさと、その裏にある無表情な冷たさ。
そして自販機の前で湊に向けた、今にも泣き出しそうで、けれど逃げ場を許さない「食い気味」な問いかけ。
あの瞬間、彼女は「物分かりの良い友達」であることを捨て、一人の剥き出しの少女として湊に向き合いました。
大好きな親友を疑いたくない、でも気になっている人の視線の先が怖い。
そんな矛盾する感情に引き裂かれそうになりながらも、あえて波風を立てる質問を投げかけたのは、彼女なりの「爆発寸前の勇気」だったはずです。
キラキラした青春の裏側に潜む、独占欲や焦燥感といった泥臭い感情を、美姫が真っ向から引き受けた名シーンでした。
彼女のこの一歩が、4人の関係を停滞から動かし、同時に戻れないところまで加速させてしまったような気がしてなりません。
以上、第17話「掛け違い」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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