今回は、「氷の城壁」第64話「祭りの後」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第63話「体育祭3」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第64話「祭りの後」のあらすじネタバレ
熱狂の渦に包まれた体育祭もついに閉会を迎えました。結果は赤組の優勝。
しかし、小雪たちの心に残っているのは、順位による勝ち負けよりも、全力を出し切ったという清々しい充足感でした。
仲間と笑い、汗を流した高校二年生の体育祭。小雪は、自分がこの場所で、これほどまでに純粋に行事を楽しめたという事実に、深い安堵と静かな喜びを噛み締めていました。
そんな祭りの余韻が漂う中、後片付けを進める生徒たちの喧騒を突き抜けて、湊が小雪の元へ歩み寄ります。
「この後、打ち上げはどうする?」
という、湊からの何気ない、けれど特別な響きを持った問いかけ。
自分の恋心を自覚したばかりの小雪にとって、湊と一緒に過ごせる「打ち上げ」は本来、夢のようなイベントのはずでした。
しかし、それ以上に彼女の心を支配したのは、元来の「コミュ障」ゆえの猛烈なプレッシャーでした。
大人数が一堂に会し、ハイテンションな陽キャのノリが支配する「打ち上げ」という空間は、内向的な小雪にとって、体育祭の競技以上に過酷なサバイバルを強いられる場所でもあったのです。
断る勇気も出ないまま、湊の誘いを受ける形で参加を決めた小雪。
そんな彼女の隣には、図書係として静かな時間を共にしてきた、唯一無二の戦友月子がいました。
「あのノリについていける気がしないんだけど……」
美術部員らしい繊細な感性を持つ彼女もまた、大人数の宴会という未知の領域に不安を隠せません。
二人はクラスメイトたちの爆発するような熱気を想像し、早くも打ちのめされそうになります。
どうすれば目立たずに、この巨大な「陽キャの壁」を乗り切れるのか。
二人は期待よりも不安に胸を騒がせ、打ち上げへと向かおうとしていました。
以上、第64話「祭りの後」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第64話「祭りの後」のネタバレ感想考察
体育祭の終わりという、爽やかさと切なさが入り混じる空気感の中で、小雪が「楽しめた」と心から安堵する姿は、彼女の心の城壁がさらに大きく開かれたことを象徴していました。優勝という結果以上に、自分の内側に確かな充実感が残った事実は、高校二年生の彼女にとって大きな自信になったはずです。
しかし、その安堵も束の間、湊からの打ち上げの誘いによって、小雪は再び自分の「苦手」と向き合うことになります。好きな人と一緒にいたいという純粋な恋心と、大人数での賑やかな場に対する拒絶反応。この二つの感情が小雪の中で激しくせめぎ合う描写は、繊細な彼女らしくて非常に切実です。本来なら喜ばしいはずの誘いが、コミュ障を自認する彼女にとっては、まるで高い壁のように立ちはだかる。その葛藤に寄り添うのが、同じ図書係の友人である霜島月子(つっこ)であるという展開も、この物語の持つ温かさを象徴していました。
陽キャのノリという、自分たちとは対極にある世界への漠然とした恐怖を共有し、真剣に悩み、作戦を練る小雪と月子。二人の姿は微笑ましくもありながら、自分たちの領域を必死に守ろうとする健気さに溢れています。祭りの熱狂が冷めやらぬ中で、静かに、しかし必死に「自分たちらしくいられる居場所」を模索する二人のやり取りは、読者の胸に深く残り、この先の打ち上げが平穏に終わることを祈らずにはいられない、非常に密度の高い幕間劇となっていました。
祭りの終わりと確かな成長
赤組の優勝という輝かしい結果以上に、小雪が「思う存分楽しめた」と自分自身に対して合格点を出せたことに、何よりも深い感動を覚えるエピソードでした。
以前の小雪であれば、大勢の人間がひしめき合う行事が終われば、ただただ精神的な疲弊に支配され「やっと終わった、早く一人になりたい」と殻にこもるのが常だったはずです。
しかし今回は、仲間と共に汗を流し、同じ目標に向かって駆け抜けた時間を、かけがえのない大切な思い出として真っ直ぐに肯定できています。
高校二年生という多感な時期に、自分の殻を少しずつ破って手に入れたこの充実感は、彼女の「氷の城壁」が内側から温かく溶け、新しい世界へと確実に足を踏み出した何よりの証拠であり、その成長ぶりは読者の目にも非常に眩しく映りました。
湊からの誘い
祭りの熱狂が去った後の静寂の中で、湊が真っ先に小雪の元へ歩み寄り、打ち上げの確認をするシーンには、二人の縮まった距離感が凝縮されています。
湊にとっては「仲間として当然一緒に来るよね」という自然な問いかけであっても、自分の恋心を自覚したばかりの小雪にとっては、その一言一言が心臓を跳ねさせる特別な意味を持って響きます。
好きな人と放課後も一緒にいたいという純粋なときめきと、それ以上に、自分の社交性のなさが露呈してしまうことへの激しい恐怖。
この相反する二つの感情の板挟みになり、期待と戸惑いの間で懸命に揺れる小雪の姿は、あまりにも不器用で、だからこそ放っておけないような愛おしさに満ちていました。
つっこと挑む壁
同じ図書係として静かな時間を共有し、互いの感性を認め合ってきた霜島月子と、打ち上げへの不安を分かち合う場面は、内向的な人間にとって痛いほど共感できる展開でした。
創造力豊かで冷静な月子にとっても、陽キャのノリが爆発する大人数の空間は、攻略の糸口が見えない未知の巨大な壁です。
周囲の熱気に飲まれて自分を見失うことを恐れ、どうすれば自分たちらしいペースを崩さずにこの試練を乗り切れるのか。
背中を合わせるようにして真剣に作戦を練る二人の慎重な奮闘は、微笑ましくもありながら、どこか戦場に向かう戦士のような悲壮感すら漂っており、この後の打ち上げが単なる宴会以上の波乱を孕んでいることを予感させてくれました。
以上、第64話「祭りの後」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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