今回は、「氷の城壁」第21話「干渉」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第20話「不可侵」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第21話「干渉」のあらすじネタバレ
「何でみんな人の噂話が好きなんだろう」
小雪にとって中学時代の想い出は辛い事しかなかったみたいです。
ある事無いことを吹聴し、情報蒐集目的だけで近づき、興味、噂、嘘、本当、かもしれない、だったら面白いな、五十嵐との関係を勝手に想像され、好奇心に晒され続けていた日々は、まさに地獄と言うべき環境でしょう。
そのせいで小雪は全てを拒絶してしまい、全てを断り続け、いつしか自分が誰からも見えなくなってしまったら楽になれるのかと、彼女の辛い過去の一部が明らかになります。
相当なストレスな環境で過ごしていたが故に、他人との関わりを極度に恐れていた小雪。
自分が消えてしまえればと、そんな事すら願うほど、思い詰めていたみたいですね。
そんな彼女は試験を終えましたが、コーヒーを三杯も飲んでしまったせいで、すっかりと体調を壊してしまったみたいです。
保健室に行き、ノリコ先生にしばらく休むようにとベットを進められてしまいます。
一方美姫は友達達とテストの打ち上げ会の準備をしていたのですが、なんと五十嵐を見つけてしまいます。
どうやら練習試合に訪れた五十嵐は小雪が同じ高校にいる事を知らないみたいです。
出来ればこのまま知らないで欲しいと願う美姫でしたが、残念な事に小雪は五十嵐を見つけてしまい、慌てて隠れてしまいます。
五十嵐が美姫の事を湊に尋ねているのを聞いてしまいますが、ノリコ先生に何をしているのかと尋ねられ、慌てて帰ってしまいます。
自分の話題にならないかと不安な小雪でしたが、湊は五十嵐に小雪の事を知っているかと尋ねてしまいます・・・
以上、第21話「干渉」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第21話「干渉」のネタバレ感想考察
中学生の頃の小雪が置かれていた環境は、想像を絶するほど残酷なものでした。
「面白いから」「かもしれない」といった無責任な好奇心で他人の人生をエンターテインメントとして消費する周囲の視線は、多感な時期の少女にとって、まさに逃げ場のない地獄だったはずです。
「誰からも見えなくなればいい」という願いは、消極的な逃避などではなく、土足で踏み荒らされる苦痛から自分を保つための、切実で唯一の防衛手段だったのだと感じ、胸が締め付けられます。
そんな彼女が、試験のストレスと体調不良で最も心細い時に、過去の象徴である五十嵐がすぐ近くまで来ているという状況は、見ていて本当に胃が痛くなります。
美姫が「このまま知らないでいてほしい」と必死に願う一方で、小雪本人が五十嵐の姿を認めてしまい、怯えて隠れるしかできない姿が、彼女の心に刻まれた恐怖の深さを物語っていました。
そして、この回で最も恐ろしいのは、雨宮湊の「小雪のこと知ってる?」という問いかけです。
湊に悪意が全くないことは分かっていますが、その「無邪気な善意」こそが、小雪が最も嫌悪し、恐れていた「噂話の種」を自ら蒔いてしまうという最悪の結果を招いています。
「干渉」というタイトルの通り、湊の関心が、小雪が必死に築いてきた「誰からも見えない平和」という城壁を内側から爆破しかねない、あまりにも残酷で不安な引きでした。
「透明」になりたいと願った、小雪の絶望的な過去
中学時代の小雪が置かれていた環境は、思春期の少女にとってあまりに過酷で、息の詰まるような「地獄」そのものでした。
自分の預かり知らぬところで、あることないことを面白おかしく言いふらされ、興味本位の視線だけで近づいてくる他人の群れ。
そこに「相手を尊重する」という概念は存在せず、小雪という一人の人間は、ただの「刺激的な噂のネタ」として消費されていただけでした。
誰かを信じれば裏切られ、何かを発信すれば歪められる。
そんな経験を繰り返せば、自分の内側を隠し、誰とも関わらない「不干渉」の壁を築くしか生きる術はなかったはずです。
彼女が抱いた「誰からも見えなくなればいい」という願いは、決して後ろ向きな現実逃避ではなく、これ以上自分の心をズタズタにされないための、最後で唯一の生存戦略でした。
すべてを断ち切り、透明な存在になることでしか手に入らなかった安らぎ。
それをようやく手に入れ、少しずつ新しい日常を歩み始めた今、かつてのトラウマの元凶である五十嵐と再会してしまう展開はあまりに残酷です。
しかも、それを繋いでしまったのが、皮肉にも「今の自分」を肯定してくれるはずの湊の無邪気な好奇心であったことが、物語の悲劇性をより一層深めています。
壊れゆく静寂と、迫りくる五十嵐の影
中学時代に小雪が必死の思いで手に入れた「透明な自分」という安らぎ。
誰からも干渉されず、誰の視界にも入らないことでようやく保たれていた平穏な静寂が、五十嵐という過去の影によって音を立てて崩れ去ろうとしています。
他校との練習試合という、本来なら接点のないはずの場所で、よりによって体調を崩し、精神的にも肉体的にも最も無防備な状態で再会してしまう。
この運命の悪戯とも言える展開が、小雪をさらなる絶望へと突き落とします。
彼女にとって五十嵐は、単なる「嫌な相手」ではなく、自分を好奇心の対象として引きずり出し、周囲に晒し上げた元凶です。
その彼が再び自分のパーソナルスペースに侵食してくる恐怖、そして自分の名前が他人の口から再び「噂話」として語られ始める予感。
せっかく築き始めた新しい生活という城壁が、五十嵐という存在が放つ不穏な空気によって、内側からじわじわと冷たく蝕まれていくような感覚に陥りました。
一度壊れた静寂を取り戻すことがどれほど困難かを知っているからこそ、迫りくる影の濃さに、読む側としても逃げ出したいような圧迫感を覚えます。
無邪気な「善意」が、不可侵の領域を暴く恐怖
雨宮湊という人間は、本来であれば誰の目にも等しく光を当てる、太陽のような存在です。
しかし、第21話で彼が取った行動は、小雪が何年もかけて必死に守り抜いてきた「不可侵の領域」を、無自覚に抉り出してしまう残酷な一撃となってしまいました。
湊にとって、他校から来た五十嵐に「小雪のことを知っているか」と尋ねることは、単なる友好的な関心であり、仲間をより深く知るための「善意」だったはずです。
しかし、小雪にとってその「関心」こそが、かつて自分を地獄に突き落とした噂話や好奇心の連鎖を呼び覚ます、最も恐ろしいトリガーでした。
かつての小雪が「誰からも見えなくなればいい」と願うほど追い詰められたのは、まさにこうした「悪気のない興味」によって、自分のプライバシーや感情が周囲の娯楽として消費されたからです。
湊が投げかけた無邪気な一言は、小雪がようやく手に入れた「新しい日常」という静寂の中に、過去の毒を再び流し込む結果を招いています。
「相手を知りたい」という光の強さが、時に相手が隠しておきたい傷跡を容赦なく照らし出し、取り返しのつかないダメージを与えてしまう。
そんなコミュニケーションの暴力性と、小雪が抱く「これ以上私に構わないで」という絶望的な防衛本能が、湊の「善意」という形を借りて激しく衝突する。この回が描いた「干渉」の恐怖は、読者の心にも冷たい棘となって突き刺さるものでした。
以上、第21話「干渉」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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