今回は、「氷の城壁」第3話「イメージの溝」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第2話「安曇美姫」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第3話「イメージの溝」のあらすじネタバレ
久しぶりに一緒に下校することになった小雪とミキ。
バイトで忙しかったミキは、親友との時間を全力ではしゃぎますが、小雪のマイペースな「シカト」に振り回され、周囲の男子からは「あの女王を振り回すミキのコミュ力はやばい」「非の打ち所がない」とアイドル視されています。
しかし、二人が団地のベンチで腰を下ろすと、ミキの表情は一変。
げっそりと疲れ果てた姿で「疲れた」と本音を漏らします。実はミキ、学校で「聖女」や「アイドルのような美少女」として扱われることに限界を感じていました。
周囲の過剰な期待に応えようと「猫をかぶる」自分に嫌気が差し、「中学の時みたいにゴリラ扱いしてくれ!」と地面をダンダン踏み鳴らし、スチール缶を握りつぶすほどのストレスを抱えていたのです。
そんな「おバカで野生児」な素顔を全開にするミキに対し、小雪は冷静に「美姫、脚」と行儀を指摘しながらも、優しく諭します。
「猫かぶってないで、素を出せばいい。離れる人は離れるけど、残る人は絶対いる」
という小雪の言葉は、彼女自身の「一人でいたい」という強い信念に基づくものでした。
その背景には、小雪が中学時代の部活動(バスケットボール)で経験した、人間関係の深い傷跡が影を落としています。
小雪はふと、最近自分に付きまとってくる雨宮湊とヨータのことをミキに聞こうとしますが、名前もうろ覚えで説明が面倒になり、「なんでもない」と話を逸らしてしまいます。
そしてテスト勉強の話題に逃げる小雪と、図星を突かれて騒ぐおバカなミキ。
性格も対人スタイルも正反対な二人ですが、互いの弱さを知っているからこそ成立している、絶妙な「凸凹コンビ」の絆が描かれたエピソードです。
以上、第3話のあらすじネタバレでした。
続きは、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第3話「イメージの溝」のネタバレ感想考察
『氷の城壁』第3話「イメージの溝」を読んで感じたのは、一見すると「完璧な美少女」に見えるミキが抱える孤独と、彼女を唯一「普通」に扱う小雪の友情の深さです。
この回を読むと、タイトルの意味がより鮮明に心に刺さります。
まず、学校でのミキが「聖女」や「非の打ち所がないアイドル」として崇められている様子と、ベンチで足を広げて缶を握りつぶす「素のゴリラキャラ」とのギャップが最高に魅力的でした。
周囲がミキに抱く勝手なイメージと、本当の自分との間にある「溝」に苦しんでいる彼女の姿は、多かれ少なかれ誰しもが持っている「他人の期待に応えようとしてしまう不器用さ」を象徴していて、胸が締め付けられます。
そんなミキに対して、小雪がかけた「猫かぶってないで」「美姫がどんなんでもそばに残る人は絶対いる」という言葉は、非常に重みがありました。
小雪自身、中学時代に部活での人間関係で深く傷ついた過去があるからこそ、無理に繋がる関係の空虚さを誰よりも知っているのでしょう。
「合わない人と関わるくらいなら一人になりたい」という小雪の極端なまでの潔さは、一見冷たく見えますが、実は自分と他人の双方に対する誠実さの裏返しなのだと感じました。
性格も、人との接し方も、全くの正反対である二人。
しかし、周囲が押し付ける「イメージ」を剥ぎ取った裸の自分をさらけ出せる相手が隣にいる。
そんな二人の関係性が、夕暮れのベンチという静かなロケーションで描かれることで、派手な事件は起きなくても、心の奥底がじんわりと温かくなるような読後感がありました。
また、湊やヨータの名前を思い出そうとして「めんどくさい」とやめてしまう小雪のマイペースさと、それを即座に見抜くミキのやり取りには思わず笑ってしまいました。
これから二人の「城壁」の中に、あの男子二人がどう関わってくるのか。ミキがいつ「素のキャラ」を学校で爆発させるのか、楽しみで仕方なくなる素晴らしい回でした。
アイドル扱いされるミキの意外な本音
学校では誰もが憧れるアイドル的な存在として扱われているミキですが、第3話ではその華やかなイメージの裏側に隠された、切実なストレスと孤独が描かれていました。
周囲から「聖女」や「完璧な美少女」という偶像を押し付けられ、無意識にその期待に応えようと自分を偽ってしまうミキ。
ベンチで疲れ果て、地面を叩きながら「もっと私を罵れ!」と叫ぶ姿は、滑稽でありながらも、本当の自分を見てほしいという切実な悲鳴のようにも聞こえます。
本来の彼女はおバカでガサツな「ゴリラキャラ」でありながら、一度出来上がってしまった「清純なイメージ」という溝に阻まれ、学校では息苦しい思いをしています。
そんな彼女にとって、乱暴な振る舞いをしても「脚」と一言注意するだけで、中身を丸ごと受け入れてくれる小雪の存在は、唯一の呼吸ができる場所なのだと感じました。
この「イメージと現実のギャップ」に悩むミキの姿は、他人の目を気にして「理想の自分」を演じてしまう多くの読者にとって、非常に共感を呼ぶポイントだったのではないでしょうか。
小雪が語る「素の自分でいい」という絆
猫をかぶって周囲に合わせることに疲弊したミキに対し、小雪がかけた「素の自分でいい」という言葉には、彼女自身の生き様が凝縮されていました。
「離れる人は離れるけど、残る人は絶対いる」という小雪の考え方は、一見すると冷淡に聞こえるかもしれません。
しかし、それは無理に自分を偽って繋ぎ止める関係の脆さを、彼女が身をもって知っているからこその誠実なアドバイスです。
中学時代の苦い経験から「一人でいること」を選んだ小雪だからこそ、ミキがどんなに「ゴリラ」な素顔を見せても変わらず隣にいるという事実に、言葉以上の重みと説得力が宿っています。
性格も人付き合いのスタンスも正反対な二人ですが、小雪はミキにとっての「安全地帯」であり、ミキは小雪にとっての「唯一の外への窓」になっています。
この「素の自分」を全肯定し合える二人の絆は、互いの足りない部分を補い合う、理想的な凸凹コンビの形として非常に美しく描かれていました。
小雪が語る「素の自分でいい」という絆
猫をかぶって周囲の期待に応えようと奔走し、心身ともに疲れ果てたミキ。
そんな彼女に対し、小雪がかけた「素の自分でいい」という言葉には、二人の間に流れる絶対的な信頼と、小雪自身の強い覚悟が込められていました。
「美姫がどんなんでも、そばに残る人は絶対いる」という小雪のアドバイスは、決して無責任な励ましではありません。
彼女自身、中学時代に人間関係で深い傷を負い、その結果として「合わない人と関わるくらいなら一人でいい」という極端なまでの自己防衛を貫いています。
そんな小雪だからこそ、表面的なイメージではなく、ミキの本質――たとえそれがおバカでガサツな「ゴリラ」のような一面であっても――を丸ごと受け入れ、肯定することができるのです。
ミキにとって小雪は、世間が押し付ける「アイドル」という仮面を脱ぎ捨て、唯一呼吸ができる安全な居場所です。
一方、小雪にとっても、自分の頑なな性格を「そういうとこー!」と笑い飛ばして隣に居続けてくれるミキは、外の世界と自分を繋ぎ止めてくれる唯一の細い糸。
性格も、人との距離感も正反対な二人。しかし、この「素の自分」を晒しても壊れないという確信に基づいた絆があるからこそ、二人はそれぞれが抱える孤独を辛うじて乗り越えていけるのだと感じさせます。
冷たい「城壁」を築く小雪が、ミキにだけ見せるこの温かな眼差しは、二人の友情がいかに特別で、かけがえのないものであるかを象徴する名シーンでした。
以上、感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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