今回は、「氷の城壁」第18話「出会い」を読んだ感想考察(ネタバレ有)記事です。
前話については、こちらの「氷の城壁」第17話「掛け違い」のネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。
「氷の城壁」第18話「出会い」のあらすじネタバレ
物語は、美姫の中学3年生時代の回想から始まります。
サバサバとした性格ゆえに周囲の女子から敬遠され、学校のトイレで自分の悪口を耳にするなど、孤独なトラウマを抱えていた美姫。
そんな彼女が通い始めた塾で、一人ポツンとしていた彼女に「横いい?」と明るく声をかけてきたのが湊でした。
湊を通じてヨータとも知り合い、救われた気持ちになっていた美姫でしたが、ある日ヨータから「湊は一人ぼっちの人を『可哀想』だと放っておけない性質だ」と聞かされます。
自分が抱いた好意のきっかけが、実は湊の「同情」によるものだったと知り、美姫は複雑な思いを抱くようになりました。
また当時の湊は、依存気質な彼女と付き合いながらも、別れる際には驚くほど淡白な反応を見せるなど、どこか歪んだ内面を露呈していました。
場面は現代の自動販売機前へと戻ります。
「こゆんのことをどう思っているのか」という美姫の問いに、湊は当時と変わらぬ調子で「見かけるたびに(また一人だ)と思って。あの子可哀想だなーって」と答えます。
その言葉に、自分自身の過去の傷を重ね合わせた美姫は、激しい憤りとともに言い放ちます。 「湊、そういう理由でこゆんに近づかないで」
親友・小雪を守るため、美姫はかつて自分に向けられたのと同じ「無邪気な同情」を真っ向から拒絶するのでした。
以上、第18話「出会い」のあらすじネタバレでした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。

「氷の城壁」第18話「出会い」のネタバレ感想考察
今回のエピソードは、まさに「出会い」という言葉が持つ光と影の両面を、美姫の視点から残酷なほど鮮やかに描き出していました。
何より胸を打たれたのは、美姫がかつて湊に救われた瞬間の「輝き」が、同時に彼女の深い「傷」にもなっていたという事実です。
孤独だった塾での日々、湊がかけてくれた言葉は、当時の美姫にとって間違いなく希望の光でした。
しかし、それがヨータの口から「ひとりぼっちの人を『可哀想』だと放っておけない性質」によるものだと明かされた瞬間、その光は「同情」という名の残酷なレッテルに変わってしまいます。
湊という人間が持つ「全肯定」の危うさも、この回で浮き彫りになりました。
彼は一見、誰にでも優しい「救世主」のように見えますが、その実、相手の内面を見て寄り添っているのではなく、「可哀想な誰かを助けている自分」を無意識に演じているに過ぎない。
依存気質な元カノへの淡白な態度や、小雪を「可哀想だから」と断じる無邪気な傲慢さは、彼がいかに相手を「自分と同じ対等な人間」として見ていないかを象徴しているようで、薄ら寒さすら感じました。
ラストシーンで美姫が放った「そういう理由でこゆんに近づかないで」という言葉には、かつて自分が味わった「同情される側の屈辱」を、大切な親友には絶対に味わわせたくないという、悲痛なまでの決意がこもっていました。
今回の「出会い」の回想を経て、美姫が湊に向けている感情が単なる恋心ではなく、憧れ、嫌悪、そして親友を守りたいという義務感が入り混じった、非常に複雑で尊いものであることが伝わる、重厚な一幕でした。
美姫の「サバサバ」の裏にある深い傷
第18話で明かされた美姫の中学時代のエピソードは、彼女が今見せている「サバサバした姉御肌」というキャラクターが、実はどれほど痛々しい経験から作り上げられた防衛本能であったかを物語っていました。
トイレの個室で後輩たちからの悪口を耳にしてしまうシーンは、まさに彼女のトラウマの原点です。
はっきりした性格が「怖い」と誤解され、表面的に仲良くしていても裏では何を言われているかわからない。
そんな疑心暗鬼の中で、彼女は「一人でいること」への恐怖と、「他人を信じること」への怯えを同時に抱えることになりました。
美姫にとって「サバサバしていること」は、単なる性格ではなく、他人に弱みを見せず、攻撃されないための「武装」でもあったのでしょう。
だからこそ、塾で孤独だった自分に湊がかけてくれた言葉は、一度は彼女の絶望を救う光となりました。
しかし、それが「対等な関心」ではなく「可哀想な人への同情」だったと知った時のショックは、計り知れません。
自分が喉から手が出るほど欲しかった救いは、相手にとっては「誰でもよかった施し」に過ぎなかった。その事実は、彼女の自尊心を深く傷つけたはずです。
今の美姫が小雪に対してこれほど献身的なのは、小雪を「自分と同じ傷を持つ、守るべき存在」として見ているからに他なりません。
美姫の「サバサバ」の裏にあるのは、かつて踏みにじられた孤独な少女の痛みであり、だからこそ、小雪に同じ「同情」という名の残酷な光を向けようとする湊を、彼女は許せなかったのだと感じます。
湊の「全肯定」に潜む危うい傲慢さ
湊が持つ「誰にでも分け隔てなく明るく接する」という特質は、一見すると理想的な善意に見えますが、第18話ではその裏側に潜む無自覚な「傲慢さ」が浮き彫りになりました。
彼の言う「全肯定」とは、相手の個性や背景を尊重した上での理解ではなく、「孤独でいる人間は等しく不幸であり、救われるべきだ」という、彼独自の極めて独善的な物差しに基づいています。
自分を「持っている側(充足している側)」、そして一人でいる小雪やかつての美姫を「持たざる側(欠けている側)」と無意識に定義し、上の立場から「同情」という名の施しを与えているに過ぎません。
特に恐ろしいのは、彼に悪気が一切ない点です。
依存気質な元カノに対して放った「あの子、俺しかいないから」という言葉には、相手を救っているようでいて、実は自分への依存を心地よく受け入れ、相手を「自立できない可哀想な存在」として固定化してしまう残酷さが潜んでいます。
美姫が激怒したのは、湊のその「無邪気な選民思想」を見抜いたからでしょう。
相手が一人でいる時間に抱いている誇りや、あえて孤独を選んでいる静かな覚悟など、湊はその複雑な内面に一切興味を持っていません。ただ「1人=可哀想」という記号だけで小雪をカテゴライズし、土足で踏み込んでいく。
彼の「優しさ」は、相手を救うための手ではなく、自分の正義感を満たすための道具になっている――。
そんな湊の精神的な「危うさ」が、美姫の怒りによって鮮烈に暴き出された回でした。
嫉妬を超えた「友情の守護」
第18話のラストで美姫が湊に向けた怒りは、単なる「好きな人が他の女子を気にしている」ことへの嫉妬ではなく、もっと気高く、切実な「親友を守るための叫び」でした。
美姫は、湊の「可哀想だから」という動機がどれほど相手の尊厳を傷つけるか、身をもって知っています。
かつての自分が味わった、救われたと思った手が実は「同情」というレッテルだったという屈辱。
その痛みを、自分にとってかけがえのない親友である小雪には絶対に味わわせたくない。そんな強い決意が、あの激しい拒絶に現れていました。
もしこれが単なる嫉妬であれば、美姫はもっと卑屈になったり、小雪に対して複雑な感情を抱いたりしたかもしれません。
しかし、彼女が選んだのは、湊の本質的な危うさを真っ向から否定し、小雪の「静かな領域」を土足で踏み荒らさせないための「盾」になることでした。
自分の恋心よりも、小雪の心がこれ以上かき乱されないことを優先した美姫。
その姿は、かつて孤独に震えていた自分自身を、小雪という親友を通して救おうとしているようにも見えます。
「友情」という名の下に、自分の過去の傷を力に変えて、無自覚な加害者になり得る湊を制止した美姫。
彼女の行動は、青春漫画における「恋の火花」という枠を超えた、魂の守護と呼べるほどに気高く、そして愛に満ちたものでした。
以上、第18話「出会い」の感想考察でした。
次の話は、こちらの「氷の城壁」全話ネタバレ感想考察をどうぞご覧ください。


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